社長から社員へ伝えたいことがあり、長い文章を社内メールで送った。しかし、最後まで読まれているかわからず、部署ごとに受け取り方も違っている。
このようなときに使えるのが、社内向けの社長メッセージ動画です。
ただし、社長が原稿を最初から最後まで読み上げるだけでは、文章を動画に置き換えただけになります。社員に内容を理解してもらうには、話す内容を絞り、表情や声が活きる構成へ組み直す必要があります。
社内向け社長メッセージ動画が使われる場面
社長メッセージ動画は、毎年の挨拶だけに使うものではありません。
会社全体へ同じ内容を伝えたい場面で使えます。
- 新年度や新しい期の経営方針
- 中期経営計画の説明
- 新しい事業や制度の開始
- 組織変更の背景
- 合併や事業統合に関する説明
- 業績や経営状況の共有
- 新入社員への歓迎メッセージ
- 社内表彰や記念行事
- 災害やトラブル発生時の説明
- 創業記念日の挨拶
- 企業理念や行動指針の共有
動画に向いているのは、数字や決定事項だけでなく、その背景や社長の考えも伝えたい内容です。
日程、申請方法、制度の細かい条件などは、文書や社内サイトのほうが見返しやすくなります。
動画と文書のどちらか一方へまとめるのではなく、役割を分けます。
| 伝える内容 | 向いている形式 |
|---|---|
| 社長の考えや姿勢 | 動画 |
| 方針を決めた背景 | 動画 |
| 社員への期待 | 動画 |
| 制度の詳しい条件 | 文書 |
| 日程や申請期限 | 文書 |
| 問い合わせ先 | 文書 |
| 複雑な数字や一覧表 | 資料 |
動画では大きな方向を伝え、細かな情報は別の資料で読めるようにします。
最初に視聴者を「全社員」でまとめない
社内向け動画だからといって、常に全社員へ同じ内容を見せるとは限りません。
新入社員、管理職、営業職、海外拠点の社員では、知っている情報も求めている説明も違います。
動画を作る前に、主に誰へ伝えるかを決めます。
新入社員向け
新入社員は、会社の歴史や社内用語をまだ理解していません。
難しい事業計画より、次の内容を中心にします。
- 会社が何を大切にしているか
- どのような姿勢で仕事をしてほしいか
- 社員にどのような成長を期待しているか
- 困ったときに何を頼ってよいか
歓迎の言葉だけで終わらず、入社後の行動につながる話を入れます。
管理職向け
管理職には、方針だけでなく、自分の部署で何をすべきかが伝わる内容が必要です。
- 今期に優先する課題
- 部署間でそろえる考え方
- 部下へ説明してほしい内容
- 判断に迷ったときの基準
- いつまでに何を変えるか
視聴後に部下へ説明することを想定し、話の区切りを明確にします。
全社員向け
全社員向けでは、特定部署にしか関係しない細かな話を増やさないようにします。
共通して知ってほしいことへ絞ります。
- 会社が現在どこにいるか
- これからどこへ向かうか
- なぜその方向を選ぶのか
- 社員に何を意識してほしいか
部署別の具体策は、別の資料や部門長からの説明へ分けます。
社内向け動画の目的を一つ決める
社長メッセージ動画には、多くの内容を入れたくなります。
業績、経営方針、理念、採用、社員への感謝、新事業まで入れると、一つひとつの話が薄くなります。
先に、動画を見た社員に何をしてほしいのかを一つ決めます。
たとえば、次のような目的です。
- 新しい方針を理解してほしい
- 変化の理由を納得してほしい
- 新事業へ協力してほしい
- 顧客対応の考え方をそろえてほしい
- 不安を減らしてほしい
- 新年度の優先順位を覚えてほしい
「社員の意識を高めたい」だけでは、話す内容を選べません。
何について、どのように考え方や行動を変えてほしいのかまで決めます。
社長メッセージ動画の基本構成
社内向け動画では、会社の沿革や社長の挨拶から長く始める必要はありません。
社員が知りたい順番に並べます。
1.今回何を伝える動画なのか
冒頭で話のテーマを示します。
今回は、来期から始める新しい顧客対応方針についてお話しします。
何の話かわかれば、社員も見る準備ができます。
「社員の皆さん、日々の業務お疲れさまです」といった挨拶は短くします。
2.現在どのような状況なのか
方針だけを伝えると、なぜ変えるのかがわかりません。
まず、会社や現場で起きていることを説明します。
- 顧客からどのような声が増えているか
- 市場や事業がどのように変わったか
- 現在の方法では何が難しくなっているか
- 会社として何を問題と考えているか
ここで細かな数字を大量に読み上げる必要はありません。
判断の前提となった数字だけを出し、詳しい資料は別に用意します。
3.会社は何を変えるのか
次に、会社として決めたことを明確にします。
- 新しい方針
- 優先する事業
- 変える制度
- やめる取り組み
- 今後の判断基準
「変革を進めます」「一丸となって取り組みます」といった言葉だけでは、社員が行動へ移せません。
何が以前と変わるのかを具体的に話します。
4.なぜその方針を選んだのか
社員が知りたいのは結論だけではありません。
経営側がどのように考えたのかがわかれば、方針を理解しやすくなります。
- 他にどのような選択肢があったか
- 何を守るための判断か
- 短期的にはどのような負担があるか
- 長期的に何を目指しているか
都合のよい部分だけを話すと、現場との温度差が広がります。
変化によって負担が増える場合は、その点にも触れます。
5.社員に何をしてほしいのか
最後に、視聴後の行動を示します。
- 上司と新しい方針を話し合う
- 自分の業務で変える点を一つ決める
- 部署別の説明会へ参加する
- 社内資料を読む
- 顧客から寄せられた声を共有する
- 不明点を指定の窓口へ送る
「今後ともよろしくお願いします」で終わらせず、次に何をするのかを明確にします。
原稿は文章ではなく話し言葉で作る
社内文書をそのまま読ませると、堅く長い動画になります。
文章で読むと問題のない言葉でも、声に出すと不自然になることがあります。
文書向けの例:
市場環境が急速に変化する状況を踏まえ、持続的な企業価値向上を実現する観点から、事業体制の見直しを行うことといたしました。
話し言葉へ直した例:
市場の変化に、今の体制のまま対応するのは難しくなっています。そこで、来期から事業の進め方を見直します。
一文を短くし、主語と結論を近づけます。
社内用語を減らす
経営会議では通じる略語でも、全社員に通じるとは限りません。
- 部署内でしか使わない略語
- 経営指標の略称
- 新しく作った制度名
- 抽象的な経営用語
- カタカナ語
使う場合は、最初に短く意味を説明します。
一文に一つの内容だけ入れる
一つの文へ理由、方針、予定、期待を詰め込むと聞き取りにくくなります。
悪い例:
来期から顧客満足度を高めるために新しい管理システムを導入し、営業部とサポート部の連携を強化することで、迅速な対応を目指します。
分けた例:
来期から、新しい顧客管理システムを導入します。
目的は、問い合わせへの対応を早くすることです。
営業部とサポート部が、同じ情報を見られるようにします。
字幕も入れやすくなります。
原稿を丸暗記させない
社長が一字一句間違えずに話そうとすると、表情が硬くなることがあります。
長い原稿を丸暗記するより、話の要点をまとめたメモを用意します。
- 冒頭で伝える結論
- 現在の状況
- 決めた方針
- 方針を選んだ理由
- 社員へ伝えたい言葉
- 最後に求める行動
言葉を完全にそろえる必要がある部分だけ、原稿として用意します。
数字、制度名、日付などは、言い間違いを防ぐために正確な表記を手元へ置きます。
長さは伝える内容から決める
短ければ必ず見られるわけではありません。長くても、社員が必要とする情報であれば見てもらえます。
ただし、一つの動画へ複数のテーマを入れないことが前提です。
| 動画の長さ | 向いている内容 |
|---|---|
| 15〜30秒 | 短い挨拶、イベント告知、感謝の言葉 |
| 1〜3分 | 新年度の方針、歓迎メッセージ、制度変更の概要 |
| 3〜5分 | 方針の背景、事業計画、組織変更の説明 |
| 5分以上 | 複数の論点を含む説明、決算や経営計画の解説 |
話が長くなる場合は、一本の動画を無理に短くするのではなく、内容を分けます。
たとえば、次の3本に分けられます。
- 社長から見た現在の状況
- 来期の経営方針
- 社員に期待する行動
必要な動画だけ見返せるようになります。
社長だけを映し続けない
数分間、同じ画角で社長が話し続けると、内容がよくても単調に見えます。
話に合わせて、補足する映像や資料を入れます。
- 社員が働いている様子
- 店舗や工場の様子
- 新しい商品や設備
- 顧客と接している場面
- 社内イベント
- 事業の流れを示す図
- 方針をまとめた短い文字
- 必要な数字やグラフ
- 過去の写真
映像を入れる目的は、見た目を華やかにすることではありません。
話している内容を理解しやすくするために使います。
「現場との連携を強める」と話す場面なら、複数部署が打ち合わせをしている映像を入れます。
「これまでの挑戦」を話す場面なら、過去の商品や創業時の写真を使えます。
テロップは要点だけ表示する
社長が話した言葉をすべて字幕にすると、画面が文字で埋まります。
音を出せない環境で見る社員が多い場合は全文字幕も選択肢になりますが、通常は要点を絞ります。
表示する内容の例:
- 来期の最優先事項
- 方針を決めた理由
- 変更する日付
- 覚えてほしい数字
- 社員に求める行動
- 問い合わせ先
長い文章ではなく、短い見出しとして入れます。
話している内容:
来期は、新規顧客を増やすことだけでなく、現在利用していただいているお客様への支援を強化します。
表示する文字:
来期は既存顧客への支援を強化
文字を読んでいる間も、社長の表情を見られるようにします。
BGMを大きくしすぎない
社内向け動画では、社長の声が最も大切です。
BGMが目立ちすぎると、話を聞き取りにくくなります。
特に次の環境を想定します。
- ノートパソコンの小さなスピーカー
- スマートフォン
- イヤホン
- 社内の共有スペース
- 周囲に音がある店舗や工場
静かな部屋で編集したときには聞き取れても、実際の職場では声が埋もれることがあります。
BGMはなくても構いません。入れる場合は、話の邪魔をしない音量にします。
撮影場所は会社らしさと音で選ぶ
社長室で撮影しなければならない決まりはありません。
動画の内容に合った場所を選びます。
| 撮影場所 | 向いている内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 社長室 | 正式な方針、経営に関する説明 | 堅い印象になりやすい |
| 会議室 | 全社員向けの一般的な説明 | 背景が寂しくなることがある |
| 執務室 | 日常に近いメッセージ | 周囲の声や個人情報に注意 |
| 店舗・工場 | 現場重視の方針 | 機械音や通行人に注意 |
| エントランス | 会社の顔を見せる動画 | 人の出入りが多い |
| 無地の壁の前 | 内容へ集中させたい動画 | 会社らしさが出にくい |
見た目だけでなく、周囲の音も確かめます。
エアコン、冷蔵庫、機械、外の車などの音は、撮影中には気づきにくいことがあります。
スマートフォンで社内撮影する場合
社内で撮影し、編集だけ外部へ依頼する方法もあります。
高価なカメラがなくても、次の点をそろえると見やすくなります。
- スマートフォンを横向きに固定する
- レンズの汚れを拭く
- 顔と同じくらいの高さに置く
- 窓を背にして撮影しない
- 顔へ正面または斜め前から光を当てる
- 周囲の音を止める
- 画面の端に余裕を残す
- 話し始める前後に数秒間を空ける
- 一度に長く話さず、区切って撮る
最初から最後まで一回で成功させる必要はありません。
構成ごとに分けて撮影すると、言い直した場合もその部分だけ撮り直せます。
社員の不安に触れない動画は反発を招きやすい
組織変更や新制度について話す場合、社員は会社の将来だけでなく、自分の仕事がどう変わるかを気にします。
明るい将来だけを話し、現場の負担に触れないと、他人事のように聞こえることがあります。
次の点を隠さず説明します。
- なぜ今変える必要があるのか
- 現場にどのような負担が出るか
- 会社はどのような支援を用意するか
- すぐには解決できない課題は何か
- 社員の意見をどこで受け付けるか
すべての答えが決まっていない場合は、決まっていないことを明確にします。
「詳細は検討中です」だけで終わらず、いつ、どのように知らせるのかも伝えます。
撮影前に社内で確認すること
社長が話した後で内容を大きく変えると、再撮影が必要になります。
撮影前に、関係部署で内容を確認します。
- 経営方針と話の内容が合っているか
- 公表前の情報が含まれていないか
- 数字や日付が正しいか
- 人事に関する表現に問題がないか
- 法務や広報の確認が必要か
- 社外へ流出して困る内容がないか
- 海外拠点向けの翻訳が必要か
- 字幕へ入れる正式名称が合っているか
一字一句を複数部署で直すと、堅い原稿になりやすくなります。
確認するのは事実、数字、公開範囲です。話し方まで社内文書のように整えすぎないようにします。
公開範囲を先に決める
社内向け動画でも、共有方法によっては外部から見られることがあります。
公開場所を先に決めます。
- 社内ポータル
- 社員限定の動画配信サービス
- 限定公開URL
- 社内チャット
- メール
- 研修システム
- オンライン会議
- 社内イベント会場
社外秘の内容が含まれる場合は、誰が見られるか、ダウンロードできるか、公開期間を設定できるかも調べます。
一般公開する採用動画と、社員限定の経営方針動画を同じ内容にしないようにします。
視聴後の反応を受け取れるようにする
動画を配信して終わりにすると、内容が伝わったか判断できません。
必要に応じて、視聴後の行動や反応を集めます。
- 簡単なアンケート
- 部署ごとの話し合い
- 質問フォーム
- 管理職からの報告
- 社内チャットの専用スレッド
- 次回動画での質問回答
再生回数だけでは、社員が内容を理解したかはわかりません。
「方針のどこがわかりにくかったか」「業務で何を変える予定か」といった質問を使います。
定期配信する場合は毎回作り込みすぎない
毎月や四半期ごとに社長メッセージを配信する場合、毎回大がかりな動画を作ると続きません。
定期動画と特別動画を分けます。
定期動画
- 同じ撮影場所
- 同じ冒頭と終了画面
- 短い構成
- 要点テロップ
- 最小限の差し込み映像
特別動画
- 新年度
- 大きな組織変更
- 新事業開始
- 周年記念
- 重要な発表
特別動画では、写真、社員の仕事風景、図解などを増やします。
すべてを同じ品質で作るのではなく、内容の重さに合わせます。
社長メッセージ動画の制作を外部へ依頼する前に
外部へ依頼するときは、単に「社長の挨拶動画を作りたい」と伝えるだけでは足りません。
まず、次の内容を整理します。
- 動画を作る理由
- 主に見る社員
- 一番伝えたいこと
- 視聴後に取ってほしい行動
- 希望する長さ
- 配信場所
- 公開できる範囲
- 社長を自社で撮影するか
- 使用できる写真や動画
- 入れたい数字や資料
- 希望する雰囲気
- 希望納期
- 社内の確認担当者
自社で撮影した素材を使う場合は、撮影前に次の点も相談します。
- スマートフォンを縦と横のどちらで撮るか
- 社長をどのくらいの大きさで映すか
- 背景に何を入れるか
- 原稿をどこへ置くか
- どこで区切って撮るか
- どの画質で保存するか
- 音声をどのように録るか
編集を始めてから映像の向きや画質が用途に合わないとわかっても、直せないことがあります。
使用したい素材は、最初にまとめて共有します。
- 社長の撮影動画
- ロゴ
- 社員や職場の写真
- 過去の社内イベント映像
- 商品や設備の写真
- 経営方針をまとめた資料
- 正式な部署名や制度名
- 使用できない素材の一覧
修正を伝える際は、「もう少し伝わるように」といった言葉ではなく、場所と内容を指定します。
- 00:28の説明を短くする
- 01:05の数字を最新の内容へ変える
- 01:40で営業部の写真を入れる
- 最後に質問フォームの案内を追加する
誰が最終決定するかも決めておきます。複数部署が別々に修正を送ると、話の方向が定まらなくなります。
まとめ
社内向けの社長メッセージ動画は、社長が原稿を読むだけでは十分ではありません。
伝える相手と目的を決め、次の順番で話を組み立てます。
- 今回何を伝えるのか
- 現在どのような状況なのか
- 会社は何を変えるのか
- なぜその方針を選んだのか
- 社員に何をしてほしいのか
原稿は文書のように整えすぎず、短い話し言葉へ直します。
編集では、要点テロップ、社員の仕事風景、数字や図を必要な場面だけに加えます。見た目を派手にするのではなく、社長の言葉を理解しやすくするために使います。
社員にとって関係のある話として構成することが、最後まで見てもらえる社長メッセージ動画につながります。

