歌ってみた用の音源やイラストは用意できたものの、MVの構成までは考えられない。どの歌詞でどの画面を出すのか、どのような動きを付けるのかも決まっていない。
このような状態でも、企画や構成に対応している制作者であれば、絵コンテなしでMVを依頼できます。
ただし、「絵コンテがない」と「希望を何も伝えない」は別です。すべてを細かく指定する必要はありませんが、曲の雰囲気、避けたい表現、投稿予定日などは伝えておかないと、完成後の修正が増えやすくなります。
この記事では、歌ってみたMVを絵コンテなしで依頼するときに、最低限まとめておきたい内容を整理します。
歌ってみたMVは絵コンテなしでも依頼できる
依頼先がMVの企画や構成に対応していれば、依頼者が絵コンテを作る必要はありません。
音源や歌詞を確認した制作者が、曲の展開に合わせて画面構成や演出を考えます。依頼者は完成形を細かく指定する代わりに、目指す雰囲気や使ってほしい素材を伝えます。
ただし、すべての制作者が構成から担当するわけではありません。
依頼前に、次の点を見ておく必要があります。
- 絵コンテなしでも受け付けているか
- 企画や構成も依頼できるか
- 参考動画だけでイメージを伝えられるか
- 制作前に仮動画や構成案を見られるか
- おまかせの場合にどこまで修正できるか
動画編集だけを受け付けている制作者の場合、依頼者側で画面構成や素材の表示順を決めなければならないことがあります。
「MV制作」と書かれていても、構成から任せられるとは限りません。
絵コンテなしと完全な丸投げは違う
絵コンテとは、動画の場面や構図、動き、切り替え方などを順番にまとめた設計図です。
手描きのイラストで作ることもあれば、文章だけで場面を指定することもあります。
絵コンテがなくても依頼はできますが、制作者が判断するための手掛かりは必要です。
たとえば「かっこいいMVにしてください」とだけ伝えても、人によって思い浮かべる映像は異なります。
- 暗い背景に強い光を入れた映像
- 激しく画面を揺らす映像
- モノクロを中心にした映像
- 文字を大きく動かす映像
- キャラクターの表情を中心に見せる映像
どれも「かっこいいMV」に含まれます。
絵コンテを用意しない場合は、細かな画面指定の代わりに、完成後の方向を決める情報を渡します。
MVの頼み方は3種類に分けられる
歌ってみたMVの依頼方法は、大きく分けると次の3種類です。
| 頼み方 | 依頼者が用意するもの | 向いているケース |
|---|---|---|
| 絵コンテを用意する | 場面構成、表示する素材、動きの指定 | 完成形が具体的に決まっている |
| 文章で構成を伝える | 歌詞ごとの希望、使いたい場面、参考動画 | 大まかな流れだけ決めたい |
| 構成から任せる | 雰囲気、目的、素材、避けたい表現 | 映像の作り方が分からない |
初めてMVを依頼する場合は、文章で大まかな希望を伝える方法か、構成から任せる方法が使いやすいでしょう。
映像の専門用語を使う必要はありません。「静かな部分では文字を少なめにしたい」「サビで一気に明るくしたい」といった言葉でも伝えられます。
絵コンテなしで依頼するときに決めること
絵コンテを作らない場合でも、次の内容は依頼前に整理しておきます。
本家に寄せるかオリジナルにするか
歌ってみたMVでは、原曲の映像を意識した構成にする方法と、歌い手独自の映像を作る方法があります。
本家の雰囲気に寄せたい場合は、どの部分を参考にしたいのかを伝えます。
- 色の使い方
- 歌詞の出し方
- 画面の切り替え方
- キャラクターの見せ方
- 全体の速さ
「本家と同じにしたい」だけでは、どこまで近づけたいのか分かりません。
反対に、オリジナルのMVにしたい場合は、原曲の映像に似せたくないことも伝えておきます。
MV全体の雰囲気
雰囲気は、形容詞を一つだけ書くのではなく、二つか三つを組み合わせると伝わりやすくなります。
例として、次のような伝え方があります。
- 明るくてかわいいが、子ども向けには見せたくない
- 暗くて不安定な雰囲気にしたい
- 静かで透明感のある映像にしたい
- 疾走感があり、文字が大きく動く映像にしたい
- シンプルだが安っぽく見えないようにしたい
「かわいい」「おしゃれ」といった言葉だけでは範囲が広いため、避けたい方向も一緒に書きます。
見せたい人物や活動内容
同じ曲でも、何を目立たせるかによって構成が変わります。
- 歌声を中心に見せたい
- キャラクターの表情を見せたい
- 新しい衣装を目立たせたい
- 活動開始の記念動画として使いたい
- 誕生日や周年に合わせて公開したい
- オリジナルキャラクターの物語を見せたい
公開の目的が分かれば、制作者も場面の優先順位を付けやすくなります。
避けたい演出
使ってほしい演出だけでなく、使ってほしくない演出も伝えます。
たとえば次のような内容です。
- 激しい点滅は避けたい
- 画面を大きく揺らしたくない
- ホラーに見える演出は入れたくない
- キャラクターの顔を隠したくない
- 細かすぎる文字を使いたくない
- 特定の色を多く使いたくない
おまかせ依頼では、好みよりも苦手な表現を伝えたほうが、完成後の大きなずれを防げることがあります。
投稿予定日
投稿予定日が決まっている場合は、希望納品日だけでなく、実際の公開日も伝えます。
納品後には、次の作業が残ることがあります。
- 動画全体のチェック
- 歌詞や名前の誤字確認
- 修正の依頼
- サムネイルの準備
- YouTubeへのアップロード
- 概要欄やクレジットの作成
- SNS告知の準備
公開日の前日に納品される予定では、修正する余裕がありません。
記念日やイベントに合わせる場合は、確認期間を含めて予定を組みます。
依頼時に用意する素材
歌ってみたMVでは、一般的に音源、歌詞、イラストなどを使います。
必要な素材は依頼先や映像の内容によって変わりますが、まずは次のものを整理します。
完成した音源
可能であれば、動画に使用する最終版の音源を渡します。
制作途中で音源の長さが変わると、歌詞や映像を出すタイミングも変わります。イントロや間奏が追加された場合は、動画の構成を直さなければなりません。
完成前の音源で見積もりを相談する場合は、後から尺が変わるかもしれないことを伝えておきます。
コピーできる歌詞データ
歌詞は画像ではなく、コピーできる文章で用意します。
次の内容も一緒に書いておくと、文字入れの間違いを減らせます。
- 漢字にする部分
- ひらがなにする部分
- 英字の大文字と小文字
- 記号や句読点の有無
- 繰り返し部分の表記
- 読み方が特殊な言葉
歌詞カードや画像だけを渡すと、制作者が文字を打ち直すことになります。
イラストデータ
イラストを使う場合は、PNGやPSDなど、依頼先が指定する形式で渡します。
キャラクターの髪、目、口、服、背景などを動かしたい場合は、パーツが分かれたデータが必要になることがあります。
一枚にまとめられた画像では、後から髪や表情だけを動かすことが難しくなります。
すでにイラストが完成している場合は、次の点を制作者へ伝えます。
- ファイル形式
- 画像サイズ
- 背景が分かれているか
- 人物と背景が分かれているか
- 表情差分があるか
- 目や口のパーツが分かれているか
- 動画での使用許可を得ているか
必要な分け方が分からない場合は、イラストを制作する前にMV制作者へ聞いたほうが手戻りを減らせます。
クレジット情報
動画内や投稿ページに載せる名前をまとめます。
- 原曲
- 作詞
- 作曲
- 編曲
- 歌唱
- MIX
- イラスト
- 映像
- ロゴやデザイン
- その他の協力者
表記名だけでなく、SNSアカウントやURLを載せる場合は、その情報も用意します。
活動名の英字表記や大文字・小文字も統一しておきます。
参考動画
参考動画は、完成形をそのまま再現してもらうためではなく、好みを伝えるために使います。
動画を送るときは、どこを参考にしてほしいのかも書きます。
- 0分15秒付近の歌詞の出し方
- サビに入ったときの画面の明るさ
- キャラクターをゆっくり拡大する動き
- 背景に光を流す演出
- 最後にタイトルを出す構成
URLだけを何本も送ると、制作者が共通点を探さなければなりません。
特に参考にしてほしい動画を二、三本に絞り、該当する場面を伝える方法が分かりやすいでしょう。
絵コンテの代わりになる依頼文
絵コンテが作れなくても、次の形で情報をまとめれば希望を伝えられます。
依頼文の例
曲名:
投稿予定日:
投稿先:YouTube
MVの方向:
原曲の映像をそのまま再現するのではなく、オリジナル寄りにしたいです。
全体の雰囲気:
夜、青、透明感のある雰囲気を希望します。暗すぎたり、怖く見えたりする演出は避けたいです。
見せたい部分:
1番は歌詞を中心に見せ、2番からキャラクターの表情を増やしたいです。最後のサビでは、最初より明るい画面にしたいです。
避けたい演出:
強い点滅、激しい画面揺れ、小さすぎる文字は避けたいです。
参考動画:
URL
0分30秒付近の文字の動きを参考にしたいです。
用意できる素材:
完成音源、歌詞、人物イラスト、背景イラスト、ロゴがあります。
構成について:
具体的な画面構成は決まっていないため、曲を聞いたうえで提案を希望します。
この程度の情報があれば、制作者は見積もりや構成を考えやすくなります。
書けない項目は空欄にせず、「決まっていない」「おまかせしたい」と書きます。
おまかせ依頼で確認しておきたい範囲
おまかせと書かれたサービスでも、任せられる範囲はそれぞれ異なります。
見積もりの段階で、次の点を聞いておきます。
- 曲を聞いて構成から考えてもらえるか
- 参考動画がなくても相談できるか
- イラストの使い方も任せられるか
- 制作前に構成案を見られるか
- 途中で仮動画を見られるか
- どの段階まで大きな変更ができるか
- 歌詞や名前の修正は何回できるか
- 縦型動画や告知用動画が別途必要か
特に見落としやすいのが、修正できる内容です。
文字の誤字を直す修正と、MV全体の構成を変える修正では、必要な作業量が大きく異なります。
完成後に「やはり明るい映像に変えたい」「サビの構成をすべて変えたい」と頼むと、最初から作り直す部分が増えます。
好みがはっきりしている部分は、制作開始前に伝えておきます。
絵コンテを用意したほうがよいケース
次のような場合は、おまかせにせず、簡単な構成メモを作ったほうがよいでしょう。
- 歌詞ごとに出したい場面が決まっている
- キャラクターの物語を映像で見せたい
- 複数人を決まった順番で登場させたい
- 衣装や表情の差分を細かく使いたい
- 原曲MVの特定場面を意識したい
- セリフや演技を映像と合わせたい
- 公開前に関係者の承認が必要になる
きれいな絵を描く必要はありません。
「イントロではロゴ」「1番は人物A」「2番は人物B」「最後のサビで二人を出す」といった文章だけでも構成メモになります。
絵コンテなしが向いているケース
反対に、次のような場合は構成から任せる方法が向いています。
- 初めてMVを依頼する
- 映像の作り方が分からない
- 曲に合う演出を提案してほしい
- 一枚絵をどのように見せればよいか分からない
- 参考動画はあるが構成を説明できない
- 細かな指定より全体の完成度を優先したい
- 制作者の作風が好きで、その感覚に任せたい
ただし、制作者の作風を見ずに丸投げするのは避けたほうが無難です。
過去の作品を見て、自分の曲と合いそうかを確かめます。
かわいい作品を中心に作っている人と、暗く激しい作品を中心に作っている人では、同じ「おまかせ」でも出てくる映像が変わります。
絵コンテなしの依頼で起こりやすい失敗
希望を「おしゃれ」だけで済ませる
「おしゃれ」「かっこいい」「エモい」といった言葉だけでは、完成形を絞れません。
色、明るさ、動きの速さ、文字の量などを追加します。
参考動画を大量に送る
参考動画が多すぎると、どの動画を優先すればよいか分からなくなります。
特に近いものを絞り、参考にしたい時間も伝えます。
嫌いな演出を伝えない
おまかせ依頼では、制作者の得意な演出が使われやすくなります。
苦手な色、激しい動き、点滅などがある場合は先に書きます。
公開日と納品日を同じ日にする
完成動画を受け取った後にも、誤字やクレジットの確認が必要です。
投稿作業に使う時間も含め、公開日より前に納品日を設定します。
イラストを先に統合してしまう
人物と背景を一枚にまとめると、人物だけを動かしたり、背景を拡大したりする作業が難しくなります。
イラスト制作中であれば、MVで必要なデータの分け方を先に聞きます。
MV制作を依頼する前にまとめる情報
見積もりを頼む前に、次の内容を一つの文章やメモにまとめます。
- 曲名
- 完成音源または仮音源
- 歌詞
- 投稿先
- 投稿予定日
- 希望する納品日
- 本家寄せかオリジナルか
- 希望する色や雰囲気
- 避けたい色や演出
- 参考動画と該当時間
- 用意できるイラストや素材
- 動かしたいパーツ
- クレジット情報
- 構成から任せたい範囲
- 予算の上限
- 修正や途中確認について聞きたいこと
すべて決めてから連絡する必要はありません。
決まっていることと、まだ決まっていないことを分けて書けば、制作者も不足している情報を質問できます。
特に、投稿予定日と素材の準備状況は、制作を始められる時期に関わります。
「来月公開したいが、イラストはまだ依頼していない」「音源は完成しているが、歌詞の表記を調整中」といった状況もそのまま伝えます。
まとめ
歌ってみたMVは、企画や構成に対応している制作者であれば、絵コンテなしでも依頼できます。
依頼者が映像の専門知識を持っている必要はありません。ただし、曲の雰囲気、見せたい部分、避けたい演出、投稿予定日、用意できる素材は整理しておく必要があります。
構成を任せたいときは、「何も決まっていない」とだけ伝えるのではなく、制作者に決めてほしい範囲を示します。
音源、歌詞、イラスト、参考動画をまとめ、決まっている内容と未定の内容を分けて伝えれば、絵コンテがなくても見積もりや制作を進めやすくなります。

