YouTubeで情報を発信したいが、顔は出したくない。自分の声を録音する環境もなく、撮影や編集に使える時間も取れない。
この場合でも、台本、ナレーション、画像や動画素材を組み合わせれば、本人が出演しないYouTube動画を作れます。
ただし、「声出しなし」と「何も準備しない」は別です。動画で誰に何を伝えるかまで決まっていなければ、台本も映像も作れません。外注前には、動画の目的、テーマ、声の雰囲気、使ってよい素材を整理します。
声出しなしのYouTube動画には複数の作り方がある
本人が話さない動画といっても、完成形は一つではありません。
どの形式を選ぶかによって、必要な素材と台本の書き方が変わります。
| 動画の形式 | 主な画面 | 向いている内容 |
|---|---|---|
| ナレーション+写真・動画素材 | 写真、風景、商品、図など | 雑学、商品紹介、企業紹介 |
| スライド解説 | 文字、図表、箇条書き | ビジネス、教育、手順説明 |
| 画面録画 | パソコンやスマートフォンの操作 | ソフト、アプリ、Webサービス |
| キャラクター解説 | イラストやアバター | エンタメ、初心者向け解説 |
| テロップ中心 | 大きな文字と短い映像 | 短い解説、ランキング、SNS向け |
| アニメーション | 図形、人物、アイコンの動き | サービス紹介、仕組みの説明 |
最初に「顔を出さない動画」とだけ決めるのではなく、視聴者に何を見せるかを決めます。
商品の形が大切なら写真や実物映像、パソコン操作を教えるなら画面録画、仕組みを説明するなら図やアニメーションが必要です。
顔出しなしと声出しなしは分けて考える
顔を出さなくても、自分の声だけを使う方法があります。反対に、顔も声も出さず、別のナレーションを使う方法もあります。
| 制作方法 | 顔 | 本人の声 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 手元撮影+本人ナレーション | 出さない | 使う | 人柄を残しやすい |
| 画面録画+本人ナレーション | 出さない | 使う | 操作説明に向く |
| 素材映像+外部ナレーション | 出さない | 使わない | 撮影と録音を減らせる |
| キャラクター+合成音声 | 出さない | 使わない | 出演者なしで続けやすい |
| テロップ+BGM | 出さない | 使わない | 短い動画に向く |
自分の声を使わない場合は、声の種類も動画の印象を左右します。
落ち着いた企業向け動画と、テンポの速いエンタメ動画では、合う声や読み方が違います。
外注前に決める5つの項目
1.誰に見せる動画か
「YouTubeを見る人」のような広い指定では、言葉の難しさや映像の雰囲気を決められません。
次のように、視聴者の状況まで書きます。
- 初めてネットショップを作る人
- 転職を考えている20代
- パソコン操作が苦手な店舗経営者
- 商品を比較している購入前の人
- 資格試験を受ける初心者
- 特定のゲームを始めたばかりの人
初心者向けなら専門用語の説明が必要です。経験者向けなら、基礎説明を短くして具体例を増やします。
2.動画を見た後にどうしてほしいか
動画の目的が変われば、最後に入れる内容も変わります。
- 商品の特徴を理解してほしい
- サービスへ興味を持ってほしい
- 操作方法を覚えてほしい
- チャンネル登録につなげたい
- Webサイトを見てほしい
- 問い合わせ前の疑問を減らしたい
一つの動画に多くの目的を入れると、話が散らかります。
まずは一番優先したい行動を決めます。
3.動画のテーマ
テーマは一文で説明できる範囲へ絞ります。
「お金について解説する」では広すぎます。
- 初めてクレジットカードを選ぶ基準
- 個人事業主が経費にできるもの
- 中古マンション内覧時の確認項目
- ECサイトで注文できないときの対処
- 商品Aと商品Bの違い
動画一本につき、一つの疑問へ答える形にすると台本を組み立てやすくなります。
4.完成動画の長さ
動画の長さは、台本の文字量と素材数に影響します。
短い動画へ情報を詰め込みすぎると、ナレーションが速くなり、画面も細かく切り替わります。
長く作る場合も、同じ説明を繰り返すだけでは見づらくなります。
外注時には、次のように幅を持たせても構いません。
- 3分から5分程度
- 8分前後
- 10分以内
- 内容を優先し、長すぎない形
- 短い動画を複数本に分ける
5.動画の雰囲気
「見やすく」「かっこよく」だけでは、制作者によって受け取り方が変わります。
色、速さ、声、映像の方向を分けて伝えます。
- 白と青を中心にした企業向け
- 落ち着いた速さ
- 明るいが子どもっぽくしない
- 写真より図や文字を多く使う
- 効果音を増やさない
- ニュース番組のような読み方
- 親しみやすい会話調
参考動画がある場合は、どの部分を参考にしたいかも添えます。
台本を自分で作る場合と任せる場合
声出しなしの動画でも、ナレーションがあるなら読み上げる文章が必要です。
台本の準備方法は主に三つあります。
完成した台本を渡す
文章、話す順番、結論まで自分で決める方法です。
内容を細かく管理できますが、読み上げたときに不自然な文章になっていないか見直す必要があります。
記事として読みやすい文章と、耳で聞いて分かりやすい文章は同じではありません。
箇条書きから作ってもらう
伝えたい内容や参考資料だけを渡し、動画用の文章へ整えてもらいます。
最低限、次の情報は必要です。
- 動画のテーマ
- 結論
- 入れたい情報
- 参考にする資料
- 入れてはいけない内容
- 最後に伝える案内
「この商品について適当に紹介してください」では、どの特徴を優先するか判断できません。
企画から任せる
動画のテーマ選び、構成、台本まで外注する方法です。
依頼者が作業する量は減りますが、チャンネルの目的や扱えない話題は伝えなければなりません。
外注先がテーマを考える場合でも、会社や本人にしか分からない情報は依頼者側で用意します。
読み上げやすい台本の作り方
動画用の台本は、短い文を中心にします。
文章が長いと、ナレーターが途中で息を継ぎにくく、視聴者も話の前半を忘れやすくなります。
一文に一つの内容を入れる
悪い例:
「この商品は軽量で持ち運びやすく、防水にも対応しているため、通勤だけでなく旅行や屋外での利用にも適しています」
分けた例:
「この商品は軽く、持ち運びやすい設計です。防水にも対応しています。通勤だけでなく、旅行や屋外でも使えます」
画面へ写真やテロップを入れる場所も作りやすくなります。
画面の指示と読み上げ文を分ける
台本の中に映像の指定を混ぜると、どこまでがナレーションか分かりにくくなります。
| ナレーション | 画面の指示 |
|---|---|
| 最初に、商品を選びます | 商品一覧を表示 |
| 次に、カートへ入れます | ボタンを赤枠で囲む |
| 注文内容を確認します | 金額と数量を拡大 |
| 最後に注文を確定します | 完了画面を表示 |
セリフ、画面、テロップを別の欄にすると、修正する場所も探しやすくなります。
固有名詞には読み方を付ける
人名、地名、商品名、英字、略語は読み間違えやすい部分です。
- 表示する文字
- 読み上げ方
- アクセントの参考
- 略さず読むか
- 英語読みか日本語読みか
この情報を一覧で渡します。
ナレーションの種類を選ぶ
自分の声を使わない場合は、人が収録するナレーションと合成音声を選べます。
| 比較項目 | 人のナレーション | 合成音声 |
|---|---|---|
| 感情の細かな表現 | 付けやすい | 声によって差がある |
| 読み方の調整 | 指示を伝えて収録 | 設定や文章で調整 |
| 修正 | 再収録が必要 | 文章修正で対応しやすい |
| 声の統一 | 同じ人へ継続依頼 | 同じ設定を保存しやすい |
| 向いている内容 | 企業紹介、物語、感情を伝える動画 | 解説、手順、継続投稿 |
どちらを選ぶ場合も、声の種類だけで決めないことが大切です。
実際の文章を数行読んだ音声を聞き、動画の内容と合っているかを見ます。
声の指定は具体的な言葉で伝える
「よい声」「プロっぽい声」では、希望する方向が伝わりません。
次の項目を分けます。
声の印象
- 落ち着いている
- 明るい
- 信頼感がある
- 親しみやすい
- 高級感がある
- 力強い
- やわらかい
読む速さ
- ゆっくり
- 通常
- 少し速め
- 冒頭だけ速くする
- 注意事項はゆっくり読む
感情の強さ
- 淡々と読む
- 明るさを少し付ける
- 結論を強く読む
- 煽るような読み方は避ける
- 商品名を大げさに強調しない
参考となる音声や動画があれば共有します。
同じ「女性の声」「男性の声」でも、年齢感や読み方によって印象は大きく変わります。
映像素材をどう用意するか
撮影をしない動画では、ナレーション中に見せる画面が必要です。
素材の準備方法は次の三つです。
自分で用意する
商品写真、会社資料、操作画面、グラフなど、内容を正確に見せたい素材を渡します。
別の画像に置き換えられないものは、自分で用意したほうが安全です。
制作者に探してもらう
一般的な風景、人物のイメージ、小物などは、利用できる素材から探してもらう方法があります。
ただし、希望する雰囲気は伝えます。
- 日本国内の写真を使う
- 人物を多く出さない
- 海外のオフィス写真を避ける
- 暗い画像を使わない
- イラスト調でそろえる
- 写真とイラストを混ぜない
図や文字で説明する
内容によっては、無理に写真を探すより、図形、矢印、数字、箇条書きで見せたほうが伝わります。
手順、比較、仕組み、金額の内訳などに向いています。
素材の権利は制作前に整理する
検索で見つけた画像やBGMを、そのまま動画へ使えるとは限りません。
外注先へ素材を渡す前に、次の点を見ます。
- YouTube動画へ使えるか
- 商用利用できるか
- 加工が認められているか
- クレジット表記が必要か
- 利用期限がないか
- 広告にも使えるか
- サムネイルへ流用できるか
自社で撮影した写真でも、人物、他社商品、社内資料が写っている場合は公開範囲を見直します。
素材探しを任せる場合は、どのような利用条件の素材を使うかも聞いておきます。
顔を出さない動画ほど画面の変化が必要
出演者が話している動画では、表情や身ぶりが画面の変化になります。
顔を出さない動画では、同じ画像を長く表示すると単調に見えやすくなります。
変化を付ける方法には次があります。
- 写真を切り替える
- 必要な部分を拡大する
- 数字を大きく表示する
- 図や矢印を出す
- 章タイトルを挟む
- 要点を短いテロップで出す
- 操作画面を見せる
- キャラクターの表情を変える
常に画面を動かす必要はありません。
ナレーションの内容が変わった場所で、画面も変える程度から始めます。
初稿後の大幅修正を減らす進め方
台本、ナレーション、動画編集をまとめて頼む場合は、完成動画を見てから台本を変えると修正範囲が広がります。
次の順番で確認すると進めやすくなります。
- 動画の目的と構成を決める
- 台本を確認する
- 声の見本を確認する
- ナレーションを作る
- 映像とテロップを入れる
- 初稿を確認する
- 誤字や映像を直す
- 完成データを受け取る
台本の段階では、内容と順番を見ます。
ナレーション完成後は、読み方、速さ、固有名詞を見ます。
動画の初稿では、画面、文字、音量、素材の選び方を見ます。
各段階で確認する内容を分ければ、完成間近の作り直しを減らせます。
修正指示は時間と内容をセットにする
動画の修正は、直す場所を時間で指定します。
- 0分18秒の商品名の読み方を変更
- 1分05秒の写真を指定画像へ差し替え
- 2分12秒のテロップを短くする
- 3分40秒のBGMを下げる
- 4分15秒のナレーション後に1秒の間を入れる
「全体的にもっと明るく」「もう少し分かりやすく」だけでは、変更する場所が決まりません。
現在の状態、変える場所、変更後の希望をまとめます。
継続制作では一本目を見本にする
複数本を投稿する場合、毎回ゼロから声やデザインを決める必要はありません。
最初の一本で、次のルールを作ります。
- ナレーションの声
- 読む速さ
- BGMの音量
- 通常テロップの色
- 強調テロップの色
- 画像を切り替える速さ
- 冒頭の長さ
- 章タイトルの形
- 動画の終わり方
- サムネイルの雰囲気
完成動画と簡単なルール表を残せば、二本目から依頼内容を短くできます。
「前回と同じ形で、今回はこの部分だけ変更」と伝えられるためです。
制作を依頼する前にまとめる内容
見積もりを頼む前に、次の内容を一つにまとめます。
- 動画の目的
- 想定している視聴者
- 扱うテーマ
- 入れたい結論
- 参考資料
- 完成動画の希望時間
- 台本の有無
- ナレーションの希望
- 人の声か合成音声か
- 声の速さと雰囲気
- 使用する写真や動画
- 素材探しを任せる範囲
- 表示する商品名や固有名詞
- 読み方の一覧
- 参考動画
- 避けたい表現
- 希望する公開日
- 最終確認を行う人
- サムネイルの有無
まだ決めていない項目には、「未定」「提案してほしい」と書きます。
何が決まり、何を任せたいのかが分かれば、必要な作業を判断しやすくなります。
まとめ
自分の声を使わなくても、台本、ナレーション、写真、動画素材、テロップを組み合わせればYouTube動画を作れます。
外注前には、誰に何を伝える動画か、どの声を使うか、画面に何を見せるかを決めます。台本がない場合でも、テーマ、結論、参考資料、入れてはいけない内容は用意します。
台本、声、映像を順番に確認すれば、完成後に方向を変える修正も減らせます。最初の一本で声やデザインの基本を決め、次回以降の見本として残すと、継続して制作しやすくなります。

