商品やサービスを短いアニメで紹介したいものの、手元にあるのは大まかな案だけ。台本も絵コンテもない状態で、どこから制作を依頼すればよいのか迷うことがあります。
手描きアニメCMは、完成した原稿を用意してから依頼するとは限りません。伝えたい相手、広告の目的、使用する場所が決まっていれば、構成や絵コンテから相談できる場合があります。
ただし、「いい感じのアニメにしてほしい」だけでは、必要な作業量も完成形も決まりません。見積もりを頼む前に、決める項目と制作者へ任せる項目を分けておく必要があります。
手描きアニメCMが向いている場面
手描きアニメCMは、実写では撮りにくい内容や、独自の世界観を見せたい広告に向いています。
たとえば、次のような内容です。
- 架空のキャラクターに商品を紹介させる
- サービスを利用する前後の変化を物語にする
- 実物では見えない仕組みを絵で見せる
- 子どもや家族向けの親しみやすい広告を作る
- 商品の特徴を大げさな動きで表現する
- ブランド独自の絵柄を作る
- 実在しない場所や出来事を描く
撮影場所、出演者、衣装、小道具を用意しなくても、絵の中で場面を作れます。実写では難しい変形や誇張も使えます。
一方、店舗の広さ、料理の質感、スタッフの表情など、実物をそのまま見せたほうが伝わる内容もあります。
| 見せたい内容 | 向いている表現 |
|---|---|
| 商品の実際の質感 | 実写 |
| 店内や施設の様子 | 実写 |
| 架空の世界やキャラクター | 手描きアニメ |
| 目に見えない仕組み | アニメ・図解 |
| アプリの操作方法 | 画面収録 |
| 数字やデータの比較 | モーショングラフィック |
| 利用者の悩みを物語で見せる | 手描きアニメ |
すべてを一つの方法で作る必要はありません。商品写真とアニメを組み合わせたり、実写映像の一部にキャラクターを登場させたりする作り方もあります。
最初に決めるのは絵柄ではなく広告の目的
手描きアニメを頼むとき、最初に絵柄やキャラクターを考えたくなります。しかし、先に決めたいのは広告の目的です。
同じ商品でも、目的によって構成が変わります。
- 商品名を覚えてもらう
- 新商品の特徴を知らせる
- Webサイトへ誘導する
- 店舗への来店を促す
- キャンペーンを告知する
- 企業の印象を変える
- 採用への応募を増やす
- 既存のキャラクターを広める
一つの短いCMに複数の目的を入れると、何を伝えたい動画なのか分かりにくくなります。
「商品説明も、会社紹介も、採用案内も入れたい」と詰め込むより、動画を見終わった人に取ってほしい行動を一つ決めます。
誰に見せるCMなのかを具体的にする
「幅広い年代へ届けたい」という指定だけでは、登場人物、言葉遣い、絵柄、テンポを決めにくくなります。
最低限、次の内容を整理します。
- 年代
- 性別を限定するか
- 個人向けか企業向けか
- 商品を知っている人か
- どのような悩みを持っているか
- どのSNSや番組を見る人か
- 広告を見たあとに何をしてほしいか
たとえば、同じ転職サービスでも、初めて転職する20代向けと、管理職経験者向けでは見せ方が異なります。
20代向けなら、応募前の不安や相談のしやすさを中心にできます。管理職向けなら、非公開求人や経験の生かし方を中心にするほうが自然です。
対象者を一人の人物として考えると、台詞や場面を決めやすくなります。
絵コンテがなくても依頼できるのか
絵コンテを自分で描けなくても、依頼できないわけではありません。
必要なのは完成した絵ではなく、CMの中で起こることを伝える材料です。簡単な箇条書きでも構いません。
たとえば、次のようにまとめます。
- 会社員が仕事に追われて困っている
- サービスを見つける
- スマートフォンから申し込む
- 作業時間が減る
- 笑顔で帰宅する
- サービス名とURLを表示する
この段階では、カメラの向きや細かな動きまで決めなくても構いません。
自社で考えた話の流れを基に絵コンテを作ってもらう方法と、目的や資料だけを渡して構成から任せる方法があります。
| 準備状況 | 依頼方法 |
|---|---|
| アイデアだけある | 企画と構成から依頼する |
| 箇条書きがある | 台本と絵コンテを依頼する |
| 台本がある | 絵コンテ以降を依頼する |
| 絵コンテがある | 作画と編集を依頼する |
| キャラクターも完成している | アニメーション部分を依頼する |
どこから頼みたいかを伝えれば、見積もりの範囲が分かりやすくなります。
企画から丸投げするときに渡す資料
企画から依頼する場合でも、制作者が商品や企業について何も知らない状態では話を作れません。
次の資料を用意します。
- 商品やサービスのWebページ
- パンフレット
- 営業資料
- 商品写真
- ロゴ
- キャラクターの設定資料
- ブランドカラー
- 過去の広告
- 顧客からよく聞かれる質問
- 競合との違い
- 広告で使えない表現
- 参考にしたい動画
資料が多い場合は、すべてをCMに入れるよう求めず、優先順位を付けます。
「商品の機能よりも、使用後の楽しさを見せたい」「Webサイトの3番目に書かれている特徴を中心にしたい」と伝えると、構成を考えやすくなります。
ショートアニメCMの基本構成
短いCMでは、会社や商品のすべてを説明できません。視聴者が理解しやすい順番に絞ります。
悩みや興味を引く場面
冒頭では、視聴者が自分に関係する広告だと分かる場面を見せます。
- よくある困りごと
- 意外な出来事
- キャラクターの強い表情
- 商品を使う場面
- 短い問いかけ
会社の沿革や長い挨拶から始めると、商品を知らない人は続きを見る理由を見つけにくくなります。
商品やサービスの登場
何を紹介するCMなのかを早めに示します。
商品名を見せるだけでなく、何を解決するものなのかを一緒に伝えます。
利用後の変化
機能の一覧ではなく、使った人に起きる変化を見せます。
- 時間に余裕ができる
- 作業が簡単になる
- 家族で楽しめる
- 外出が楽になる
- 商品を選びやすくなる
手描きアニメでは、変化を表情、動き、背景色などで分かりやすく描けます。
商品名と次の行動
最後に商品名、会社名、検索用の言葉、URLなどを表示します。
表示する情報が多すぎると読み切れません。広告を出す場所から直接Webページへ移動できる場合は、長いURLを画面へ載せない方法もあります。
CMの秒数を先に固定しすぎない
広告枠の秒数が決まっている場合を除き、話の内容より先に長さを固定すると、説明が詰まることがあります。
まず、必要な場面を書き出します。そのあとで、どの場面を削るか、何秒程度に収めるかを決めます。
長さを考えるときは、次の項目を見ます。
- 広告を出す媒体
- ナレーションの文字数
- 台詞の数
- 登場人物の数
- 場面転換の回数
- 商品名を表示する時間
- 最後の案内を読む時間
短い動画ほど簡単に作れるとは限りません。限られた時間で内容を伝えるため、構成の整理に時間がかかることがあります。
登場人物を増やすと作業も増える
手描きアニメでは、登場人物の数や動きの細かさが作業量に関わります。
一人増えると、キャラクターデザインだけでなく、表情、服装、動き、ほかの人物との位置関係も決めることになります。
見積もりへ影響しやすい項目には、次のものがあります。
- 登場人物の数
- キャラクターを新しく作るか
- 背景の数
- 場面転換の回数
- 動きの細かさ
- 表情の種類
- 衣装の変更
- 口の動きを音声へ合わせるか
- 特殊なエフェクト
- 修正による描き直し
背景にいるだけの人物と、画面の中心で話す人物では必要な作業が違います。
見積もりを頼むときは、「登場人物3人」だけでなく、それぞれが何をするのかも伝えます。
絵柄は参考画像だけで決めない
希望する絵柄を言葉だけで伝えるのは難しいため、参考画像が役立ちます。
ただし、既存作品の画像を送り、「これと同じ絵柄にしてほしい」と頼む方法は避けたほうがよいでしょう。
参考にしたい部分を分けて説明します。
- 線の太さ
- 色の明るさ
- 頭身
- 表情の大きさ
- 背景の細かさ
- 動きの速さ
- 全体の年齢感
- かわいい、落ち着いた、勢いがあるなどの印象
「頭身はこの画像に近く、色はもう少し落ち着かせたい」「表情は大きくしたいが、子ども向けには見せたくない」と書けば、方向を共有しやすくなります。
避けたい表現も一緒に伝えます。
SNS用とテレビ用では準備が異なる
同じアニメCMでも、掲載先によって画面サイズや情報量が変わります。
| 項目 | SNS広告 | テレビCM |
|---|---|---|
| 画面の向き | 縦長・正方形・横長 | 主に横長 |
| 音の扱い | 無音で見られることがある | 音声を含めて見られやすい |
| 視聴環境 | スマートフォン中心 | テレビ画面 |
| 文字 | 小さすぎると読めない | 表示位置にも配慮が必要 |
| 動画の展開 | 冒頭で興味を引く | 広告枠の秒数に合わせる |
| 納品データ | 媒体ごとに複数必要なことがある | 放送用の仕様確認が必要 |
Instagram、TikTok、YouTubeなど複数の場所へ出す場合は、横長動画を完成後に切り抜くだけではうまく収まらないことがあります。
人物や商品を画面の中央付近に置く、文字を別データにするなど、最初から作り分けを考えます。
テレビで使う場合は、制作を始める前に広告代理店や放送局から納品条件を受け取り、制作者へ渡します。
ナレーションと台詞を分けて考える
アニメCMの音声には、画面外から説明するナレーションと、登場人物が話す台詞があります。
ナレーションは短時間で情報を伝えやすい一方、文章が長いと画面を見る余裕がなくなります。
台詞は人物の感情を伝えやすいものの、登場人物が増えるほど声の用意も必要です。
| 音声の使い方 | 向いている内容 |
|---|---|
| ナレーション中心 | 商品説明、企業紹介 |
| 台詞中心 | 物語、悩みの再現 |
| 両方を使う | 短い物語と説明を組み合わせる |
| 音声なし | 展示会、店頭、無音再生されるSNS |
声を付ける場合は、誰が録音するかも決めます。
- 自社のスタッフ
- ナレーター
- 声優
- AI音声
- 制作者側で手配
原稿を変更すると、音声の録り直しやアニメの長さの調整が必要になります。録音前に台本を確定させる流れを組みます。
BGMと効果音の権利を確認する
市販の曲やSNSで流行している曲を、広告へ自由に使えるとは限りません。
BGMや効果音を付ける場合は、次の内容を確かめます。
- 商用広告に使えるか
- テレビでも使えるか
- SNS広告への配信が認められているか
- 使用期間に制限があるか
- クレジット表記が必要か
- 媒体を増やしたときに追加手続きが必要か
自社で音源を用意する場合は、広告利用できる根拠も制作者へ伝えます。
音源の手配まで依頼する場合は、使用予定の媒体を最初にすべて伝えます。
絵コンテでは完成した絵を求めない
絵コンテは、完成前に話の順番と画面の構成を決めるためのものです。
線が簡単でも、次の内容を判断できれば役割を果たします。
- 誰が画面に出るか
- どこで場面が変わるか
- どの台詞を話すか
- 商品をいつ見せるか
- 文字をどこへ入れるか
- 最後に何を表示するか
絵の細かさだけを見るのではなく、話が伝わる順番になっているかを見ます。
この段階で直したいのは、場面の追加、順番の変更、登場人物の変更などです。作画後に構成を変えると、完成した絵を使えなくなることがあります。
仮動画で見る部分
絵コンテの次に、静止画や簡単な動きをつないだ仮動画を確認することがあります。
ここでは、次の点を見ます。
- 全体の長さ
- 場面を理解できる速さ
- ナレーションと画面のずれ
- 商品名を読める時間
- 話の流れ
- 動き始めるタイミング
- BGMとの合い方
絵が完成していなくても、動画として見たときのテンポは判断できます。
社内確認が必要な場合は、この段階までに関係者の意見を集めます。完成後に経営者や広告担当者が初めて見て、構成から直すことになると作業が大きく戻ります。
修正指示は場所と内容を分ける
修正を頼むときは、「もっと分かりやすく」「もう少しかっこよく」といった言葉だけでは伝わりません。
時間、場所、変更内容をセットにします。
- 3秒付近の文字を大きくする
- 5秒からの表情を笑顔へ変える
- 商品が映る時間を1秒長くする
- 最後の会社名を中央へ移動する
- 2番目の場面を削除する
- 全体の色を少し落ち着かせる
複数人で確認する場合は、一つの文書へまとめます。
担当者ごとに別々の指示を送ると、「赤にする」と「青にする」のように内容がぶつかることがあります。自社側で最終判断する人を決めておきます。
見積もり前に伝える項目
最初の問い合わせでは、決まっている範囲をまとめて送ります。
- CMの目的
- 見せたい相手
- 使用する媒体
- 希望する長さ
- 動画の向き
- 商品やサービスの資料
- キャラクターの有無
- 台本の有無
- 絵コンテの有無
- 希望する絵柄
- 登場人物の数
- ナレーションや台詞の有無
- BGMや効果音の有無
- 希望する納期
- 実績としての公開可否
- おおよその予算
未定の項目は未定と書きます。
すべてを自分で決めるより、「SNS広告で使う場合に適した長さを相談したい」「ナレーションが必要か提案してほしい」と伝えるほうがよい場合もあります。
納品データは使い方から決める
完成したMP4だけで足りるかは、その後の使い方によります。
納品前に次の内容を決めます。
- 横長版
- 縦長版
- 正方形版
- 字幕あり版
- 字幕なし版
- 音あり版
- 音なし版
- ロゴや日付を変更した別版
- CM全体の完成データ
- 一部を切り出した短い動画
- 静止画として使う場面
キャンペーン期間や価格が画面に入っている場合、あとから内容を変えられるかも聞いておきます。
定期的に広告を出すなら、商品情報が変わりにくい本編と、変更しやすい最後の案内を分けて作る方法もあります。
手描きアニメCMの制作を依頼する前に整理する内容
依頼前には、完成形を細かく決めるよりも、判断に必要な情報をそろえます。
最初にまとめたいのは次の4点です。
何のために作るか
商品認知、来店、問い合わせ、採用など、主な目的を一つ決めます。
誰に見せるか
年代や立場だけでなく、どのような悩みを持つ人なのかを書きます。
どこで使うか
テレビ、YouTube、Instagram、TikTok、Webサイト、イベントなど、予定している場所を挙げます。
どこから任せるか
企画、台本、絵コンテ、キャラクターデザイン、作画、音声、編集のうち、用意できるものと任せたいものを分けます。
問い合わせ文は、次のようにまとめられます。
新商品のSNS広告として、手描きのショートアニメCMを制作したいです。
20代から30代の会社員を対象に、商品の手軽さを伝える目的です。
商品資料とロゴはありますが、台本と絵コンテはありません。
登場人物は1人を想定しています。
InstagramとYouTubeで使用するため、縦長と横長の制作について相談したいです。
ナレーション、BGM、効果音を含めた場合の制作範囲を教えてください。
まとめ
手描きアニメCMは、絵コンテがない状態からでも相談できます。ただし、何を伝えたいのか分からないまま、企画をすべて任せることはできません。
まず、広告の目的、見せたい相手、使用する媒体、視聴後に取ってほしい行動を決めます。そのうえで、商品資料、ロゴ、参考動画、希望する絵柄などを渡します。
制作が始まったあとは、絵コンテで話の順番を見て、仮動画で長さとテンポを見ます。完成直前まで社内確認を残さず、構成を変更しやすい段階で意見をまとめることも欠かせません。
SNSとテレビでは、画面サイズや納品条件が異なります。将来使う可能性がある媒体も含めて伝え、必要な動画の種類を見積もり前にそろえておくと、完成後の作り直しを減らせます。

