コンサルティング、研修、保守、代行、SaaS、会員制サービスなどは、商品そのものをカメラで撮影できません。
営業資料に機能や特徴を並べても、「結局、何をしてくれるのか」「利用すると何が変わるのか」が伝わらないことがあります。
このようなサービスでは、説明する人を撮影するよりも、利用者の悩み、サービスの仕組み、利用後の変化をアニメーションで見せる方法が合います。
ただし、会社案内や営業資料をそのまま動画にしても、分かりやすくなるとは限りません。動画制作を頼む前に、誰のどの悩みを説明するのかを絞る必要があります。
無形サービスが説明しにくい理由
形のある商品なら、外観、使い方、大きさ、動作などを映像で見せられます。
無形サービスには、撮影する対象がありません。説明の中心になるのは、作業の流れ、専門家の判断、システムの処理、契約後の支援など、目に見えにくい内容です。
たとえば、次のような言葉だけでは利用場面を想像しにくいでしょう。
- 業務を効率化します
- 集客を支援します
- 課題に合わせて提案します
- 一元管理できます
- 手厚くサポートします
- データを活用します
書いてある内容は間違っていなくても、利用者が実際に何をするのかが見えません。
「問い合わせが来るたびに担当者が表計算へ入力している」「複数の店舗から届く報告を本部でまとめ直している」など、利用前の場面から見せると、サービスとの関係が分かりやすくなります。
アニメーションではサービスそのものより利用場面を見せる
無形サービスの動画では、機能一覧を順番に紹介するより、利用者が困っている場面から始めたほうが内容を組み立てやすくなります。
基本の流れは次の形です。
- 利用者が困っている
- 問題が起きる理由を示す
- サービスを使う
- 作業や情報の流れが変わる
- 利用後の状態を見せる
- 次に取ってほしい行動を示す
たとえば、予約管理サービスなら、最初に機能名を並べる必要はありません。
電話、メール、予約サイトから別々に予約が入り、担当者が転記している場面を見せます。その後、情報が一つの画面に集まり、空き状況が自動で更新される流れを描きます。
視聴者が知りたいのは、機能の名前よりも、自分の仕事がどう変わるかです。
実写・画面録画・アニメーションの違い
サービス紹介動画の作り方は一つではありません。
内容に合う方法を選びます。
| 作り方 | 向いている内容 | 苦手な内容 |
|---|---|---|
| 実写 | 人柄、店舗、設備、接客風景 | 目に見えない仕組み |
| 画面録画 | ソフトやアプリの操作方法 | 導入前の悩みや利用後の変化 |
| スライド動画 | 数字、図表、短い説明 | 人物の行動や場面の変化 |
| アニメーション | 無形サービス、業務の流れ、利用場面 | 実物の質感や現場の臨場感 |
| 実写とアニメの併用 | 人物の信頼感と仕組みの説明 | 構成が複雑になると情報が散らばる |
担当者の人柄や接客を見せたいなら、実写が使いやすいでしょう。
システムの操作手順を説明するなら、画面録画が適しています。
利用前の悩みから利用後の変化までを見せたい場合は、人物、図形、文字を自由に配置できるアニメーションが使いやすくなります。
最初に決めるのは動画の長さではない
動画制作の相談では、「何分の動画を作るか」から考えがちです。
先に決めたいのは、誰が、どこで、何を知るために見る動画なのかです。
誰に見せるか
同じサービスでも、経営者と現場担当者では知りたい内容が違います。
経営者は、導入によってどのような問題を減らせるかを見ます。現場担当者は、毎日の作業がどう変わるかを気にします。
対象を「企業」や「お客様」と広く設定すると、どちらにも刺さらない説明になりやすくなります。
次のように具体的にします。
- 小規模店舗の経営者
- 営業部門の管理者
- 新しく配属された社員
- システム導入を検討している担当者
- サービスへ問い合わせた見込み客
- 契約直後の利用者
どこで見せるか
動画を使う場所によって、必要な説明量が変わります。
- Webサイトのトップページ
- サービスの詳細ページ
- 営業商談
- 展示会
- SNS広告
- YouTube
- セミナー
- 社内研修
- 契約後の案内
営業担当者が補足しながら見せる動画なら、すべてを動画内で説明する必要はありません。
一方、Webサイトで初めてサービスを知る人に見せるなら、会社独自の用語を避け、前提から説明する必要があります。
視聴後に何をしてほしいか
動画を見た人に取ってほしい行動は、一つに絞ります。
- サービス内容を理解する
- 資料を請求する
- 問い合わせる
- 無料体験を始める
- 商談で詳しい説明を聞く
- 社内で導入を検討する
- 操作方法を覚える
認知、理解、問い合わせ、研修を一本の動画で済ませようとすると、内容が散らばります。
説明するサービスを一文にする
動画の構成を考える前に、サービスを一文で説明します。
使いやすい形は次のとおりです。
「誰が抱えている、どの問題を、どのような方法で減らすサービスか」
例:
- 複数店舗の日報集計に時間がかかる本部担当者向けに、報告を一つの画面へ集めるサービス
- 採用後の研修内容が担当者によって変わる企業向けに、教育動画を共通化するサービス
- 電話対応で作業が止まる事業者向けに、問い合わせの一次対応を代行するサービス
- 顧客情報が複数のファイルへ分かれている営業部門向けに、情報をまとめて管理するサービス
この一文が長くなる場合は、動画で扱おうとしている内容が多すぎます。
複数の対象や用途があるサービスでも、一本の動画では主な対象を一つ選びます。
機能ではなく変化を整理する
サービス資料には、機能名や対応範囲が並んでいることがあります。
そのまま動画へ入れる前に、「その機能によって何が変わるか」へ置き換えます。
| 機能の説明 | 利用者に起きる変化 |
|---|---|
| 情報を一元管理 | 複数のファイルを探さなくてよくなる |
| 自動通知 | 担当者が毎回連絡しなくてよくなる |
| 予約状況を共有 | 電話で空きを確認する回数が減る |
| レポートを自動作成 | 月末の集計作業を減らせる |
| 専門家が個別支援 | 自社だけで判断しにくい問題を相談できる |
| 多言語対応 | 言語ごとに案内を作り直さずに済む |
動画では、左側に利用前、右側に利用後を置くと変化を見せやすくなります。
「高機能」「便利」「効率的」といった言葉だけで済ませず、どの作業が減るのかを場面で示します。
無形サービスの動画で使いやすい構成
一本の動画ですべてを説明する必要はありません。
初めてサービスを知る人向けなら、次の構成が使いやすくなります。
1.よくある悩み
最初に、対象者が経験している場面を見せます。
例:
- 問い合わせへの返答が遅れている
- 紙と表計算へ同じ情報を入力している
- 営業担当者ごとに説明内容が違う
- 新人教育を毎回一から行っている
- 複数の担当者へ同じ確認をしている
悩みを増やしすぎず、サービスと最も関係の深いものに絞ります。
2.問題が続く理由
「忙しいから」だけではなく、どこに無駄があるのかを見せます。
- 情報が複数の場所へ分かれている
- 作業が特定の人に集中している
- 手作業で転記している
- 対応方法が決まっていない
- 進み具合を共有できていない
原因を示すことで、サービスが必要になる理由につながります。
3.サービスの使い方
利用者が行うことを簡単に見せます。
- 情報を登録する
- 担当者を設定する
- 専門家へ相談する
- 依頼内容を送る
- 進み具合を画面で見る
- 自動で届く結果を確認する
社内の処理をすべて見せる必要はありません。利用者が関わる部分を中心にします。
4.利用後の変化
利用前と同じ人物や場所を使い、変化を見せます。
最初に慌てていた担当者が、最後には一つの画面で状況を確認できている、といった流れです。
人物を変えずに前後を見せると、サービスの効果が伝わりやすくなります。
5.次の行動
動画の最後には、視聴後に取ってほしい行動を示します。
Webサイトに掲載する動画なら、詳細ページや問い合わせへの流れを考えます。営業で使う動画なら、その後に担当者が説明しやすい終わり方にします。
原案は完成した台本でなくてもよい
制作を依頼するために、映像用の台本を完成させる必要はありません。
ただし、会社案内やパンフレットを渡して「いい感じにまとめてください」と頼むだけでは、何を優先すべきか判断しにくくなります。
最低限、次の内容をメモにします。
- サービスの対象者
- 対象者が困っていること
- 問題が起きる理由
- サービスを使う流れ
- 利用後に変わること
- 他社と混同されたくない点
- 動画を使う場所
- 視聴後に取ってほしい行動
- 必ず入れる表現
- 使ってはいけない表現
既存の営業資料がある場合も、すべてのページを動画へ入れるのではなく、動画で扱う部分を指定します。
台本には話し言葉を使う
営業資料の文章をそのまま読み上げると、硬く長い動画になります。
たとえば、次の文章は資料には使えても、ナレーションでは聞き取りにくくなります。
「当サービスは、業務における情報共有の一元化を実現することにより、組織全体の生産性向上に寄与します」
動画では、次のように分けます。
「情報が、メールや表計算に分かれていませんか。
このサービスなら、必要な情報を一つの画面にまとめられます。
担当者が変わっても、進み具合をすぐに確認できます」
一文を短くし、場面と合わせて順番に説明します。
映像で見せている内容を、ナレーションでもすべて読み上げる必要はありません。
専門用語は画面だけで補わない
BtoBサービスやSaaSには、社内で当たり前に使っている言葉があります。
初めて見る人には伝わらないことがあるため、次の言葉は見直します。
- 独自の機能名
- 業界内の略語
- 社内で使っている部署名
- 抽象的なカタカナ語
- 説明なしの数値
- 意味の広い「ソリューション」
- 対象が分からない「最適化」
専門用語を残す場合は、人物の行動や図を使って意味を補います。
用語を別の難しい言葉へ置き換えるのではなく、実際に何が起きるかを説明します。
動画へ入れる情報を減らす基準
動画制作では、入れたい内容よりも、削る内容を決める作業が必要です。
次の情報は、別の資料に分けられないか考えます。
- 全機能の一覧
- 会社の沿革
- 代表者の長いあいさつ
- 細かな契約条件
- すべての料金プラン
- 想定できる利用者の全業種
- 操作画面のすべて
- 導入手順の細部
- よくある質問の全項目
サービスの概要動画なら、まず「自分に関係があるサービスだ」と分かる内容を優先します。
細かな機能や料金は、動画を見た後にWebページや営業資料で確認できます。
アニメーションのテイストを決める
同じ台本でも、人物や背景の雰囲気によって受ける印象が変わります。
親しみやすい人物中心
利用者と担当者のやり取りを見せやすく、研修、採用、生活支援、個人向けサービスなどに使えます。
シンプルな図形中心
業務の流れ、データの移動、システムの仕組みなどを説明しやすい構成です。
ホワイトボード風
話の順番に合わせて図や文字が描かれるため、講義、解説、教育内容と相性があります。
写真や画面を組み合わせる
実際の管理画面、施設、担当者の写真などを加えると、サービスとの結び付きが分かりやすくなります。
テイストは、担当者の好みだけでなく、視聴者と使用場所に合わせます。
ナレーションの有無を決める
ナレーションを入れると、画面だけでは説明しにくい内容を補えます。
一方、展示会やSNSなど、音を出さずに見られる場所では、字幕だけでも内容が分かる構成が必要です。
依頼前に次の点を決めます。
- ナレーションを入れるか
- 字幕をすべて表示するか
- 要点だけ文字で出すか
- 男性・女性など声の希望があるか
- 落ち着いた話し方か明るい話し方か
- 社内の担当者が収録するか
- 複数の言語で使うか
- 無音でも理解できる必要があるか
ナレーション原稿を後から大きく変えると、映像の長さや人物の動きも直すことになります。
内容の修正は、音声収録前にまとめます。
制作途中で見るべきところ
完成動画だけを見て修正するのではなく、台本や絵コンテの段階で内容を見ます。
台本で見るところ
- 対象者が明確か
- 悩みから始まっているか
- サービス名の説明が長すぎないか
- 専門用語が残っていないか
- 利用後の変化が入っているか
- 最後の行動が一つに絞られているか
絵コンテで見るところ
- ナレーションと場面が合っているか
- 人物の行動で内容を理解できるか
- 文字が多すぎないか
- 利用前と利用後の違いが見えるか
- ロゴや商品名の位置が適切か
- 実際には行わない操作を描いていないか
仮動画で見るところ
- 場面の切り替えが速すぎないか
- 字幕を読む時間があるか
- 人物の動きが説明を邪魔していないか
- 数字や固有名詞が正しいか
- 音を消しても概要が分かるか
- 最後に次の行動が分かるか
後の段階ほど、大きな変更には多くの作業が必要になります。
社内確認で修正が増える原因
企業向けの動画では、複数の部署や担当者が内容を確認することがあります。
意見を個別に送ると、同じ場面について反対の修正が届くこともあります。
修正を出す前に、社内で次の内容をそろえます。
- 誰が最終決定するか
- 法務や広報の確認が必要か
- 商品名や機能名の正式表記
- 公開できない情報
- 変更予定のある数字や画面
- ブランドカラーやロゴのルール
- 修正内容をまとめる担当者
各担当者が直接制作者へ連絡するのではなく、社内で一つにまとめて送るほうが混乱を防げます。
更新しやすい動画にする
無形サービスは、料金、画面、機能、対応地域などが変わることがあります。
短期間で変わりそうな情報を動画内へ多く入れると、そのたびに修正が必要です。
更新が想定される場合は、次の方法を考えます。
- 具体的な料金はWebページに分ける
- 管理画面を細部まで映さない
- キャンペーン情報を入れない
- 担当者名を固定しない
- 年度や件数を必要以上に入れない
- 変更しやすい場面を動画の後半へまとめる
- ナレーションと字幕の修正範囲を確認する
制作を依頼するときは、納品後の修正方法も聞いておきます。
元の編集データを受け取れるかどうかだけでなく、後日修正を頼めるか、データがどのくらい保管されるかも確認する項目です。
利用範囲と権利を確認する
完成した動画をどこで使うかによって、必要な権利が変わることがあります。
相談時には、予定している使用先をまとめます。
- 自社Webサイト
- YouTube
- SNS
- Web広告
- 展示会
- 営業資料
- セミナー
- 社内研修
- 顧客向けマニュアル
- 海外向けページ
人物素材、写真、動画、音楽、ナレーションなど、動画内で使う素材の利用条件も確認します。
現在の用途だけでなく、将来広告へ使う予定がある場合も先に伝えます。
アニメーション制作を依頼するときの資料
見積もりを頼む前に、次の内容を一つの資料やメモへまとめます。
動画の目的
- 何を説明する動画か
- 誰に見せるか
- どこで使うか
- 視聴後に何をしてほしいか
サービスの内容
- 対象者
- 対象者の悩み
- サービスの仕組み
- 利用の流れ
- 利用後の変化
- 他社と混同されたくない点
制作条件
- 希望する動画の長さ
- 希望納期
- 公開予定日
- ナレーションの有無
- 字幕の有無
- 希望するテイスト
- 参考動画
- 使用するロゴや画像
- 予算
- 社内の確認者
納品後の利用
- 掲載する媒体
- 広告利用の有無
- 多言語版の予定
- 更新の予定
- 実績公開の可否
- 後日の修正方法
- 編集データの扱い
すべてを完成させてから相談する必要はありません。
決まっていることと未定のことを分ければ、制作者から必要な提案を受けやすくなります。
形のないサービスの紹介動画を外注する前に
依頼前には、会社案内を渡すだけでなく、動画の中心になる場面を決めます。
- 誰が困っているか
- どの作業や問題を減らすか
- サービスを使うと何が変わるか
- 動画をどこで見せるか
- 視聴後に何をしてほしいか
この五つが決まれば、台本や絵コンテを作るための土台になります。
参考動画を送るときは、「このような動画にしたい」だけでなく、人物の雰囲気、図の見せ方、話す速さなど、どこを参考にしたいのかを書きます。
動画内へ入れる機能や数字も、必須のものとWebページへ任せるものに分けます。
まとめ
形のないサービスを動画で説明するときは、サービスの機能を最初から並べるのではなく、利用者が困っている場面から始めます。
問題が起きる理由、サービスを使う流れ、利用後の変化を人物や図で見せれば、実物を撮影できないサービスでも利用場面を伝えられます。
制作を頼む前に決めたいのは、動画の細かな演出ではありません。
誰に見せるのか、どこで使うのか、どの悩みを扱うのか、見た後に何をしてほしいのかを整理します。
既存の営業資料から情報をすべて移すのではなく、動画では一つの問題と一つの変化に絞ることが、内容を分かりやすくする近道です。

