店舗の外観をドローンで撮影すると、地上からでは収まりにくい建物全体や、駐車場、入口、周辺の景色まで一つの画面に入れられます。
ただし、撮影場所へドローンを持って行けば、すぐに飛ばせるとは限りません。店舗の立地、周囲の建物、人や車の通行、空港との距離などによって、撮影方法や準備する日数が変わります。
依頼前に確かめたいのは、機材の細かな性能よりも、飛行できる場所か、何を撮りたいか、当日に人や車をどこまで整理できるかの3点です。
最初に店舗周辺で飛ばせるかを調べる
店舗外観の撮影では、住所を伝えて飛行できる場所か調べてもらうことから始めます。
国土交通省は、空港周辺、緊急用務空域、地上または水上から150メートル以上の空域、人口集中地区などを、ドローンの特定飛行に関わる空域として挙げています。夜間飛行、目視外飛行、人や物件から30メートル未満で飛ばす場合なども、許可や承認が必要になることがあります。
都市部の店舗は、人口集中地区に入っていることが珍しくありません。周囲に住宅、電線、道路、歩行者がある場合は、飛ばせる範囲も限られます。
見積もりを頼むときは、次の情報を伝えます。
- 店舗の正確な住所
- 敷地の広さ
- 駐車場の有無
- 店舗前の道路の広さ
- 近くに高い建物があるか
- 電線や街路樹があるか
- 人や車が少ない時間帯
- ドローンが離着陸できそうな場所
- 撮影希望日
- 予備日にできる日
住所が分からなければ、飛行に必要な手続きや撮影方法を判断しにくくなります。店舗名だけではなく、番地まで伝えたほうが話が早く進みます。
航空法の許可だけで撮影が決まるわけではない
ドローンの撮影では、国への飛行許可と、撮影場所を使うための確認を分けて考えます。
航空法上の手続きが済んでいても、他人の敷地を離着陸場所に使えるわけではありません。商業施設の一画にある店舗なら、施設管理者への連絡が必要になることもあります。
依頼者側で確認しておきたい相手は、次のとおりです。
- 土地や建物の所有者
- 商業施設の管理会社
- テナントを管理する会社
- 駐車場の管理者
- 店舗に隣接する施設
- 撮影時間中に出入りする取引先
- 看板やのぼりを道路側へ出している場合の管理者
撮影業者が行う飛行手続きと、店舗側が行う施設内の調整は同じではありません。どちらが何を担当するのか、見積もりの段階で決めておきます。
地上撮影とドローン撮影の違い
ドローンは、地上撮影の代わりではありません。向いている場面が異なります。
| 撮影方法 | 分かりやすい内容 | 苦手な内容 |
|---|---|---|
| 地上からの撮影 | 看板、入口、店内への導線、外壁の細部 | 建物と敷地の全体像 |
| ドローンによる静止画 | 建物全体、駐車場、敷地、周辺環境 | 店頭の細かな案内 |
| ドローンによる動画 | 建物へ近づく動き、敷地の広さ、立地 | 店内の商品や接客 |
| 地上撮影と空撮の組み合わせ | 外観から入口、店内までの流れ | 撮影する項目が増える |
店舗の存在場所を分かりやすく見せたいなら、上空から建物全体を撮ります。入口や看板を見せたいなら、低い位置からの空撮や地上撮影も必要です。
空撮だけで全てを済ませようとすると、店舗名や入口が小さく映り、来店する人に必要な情報が伝わらないことがあります。
撮影の目的を一つに絞る
依頼前に、動画や写真を何に使うか決めます。
用途によって、必要な高さやカメラの動きが変わるからです。
ホームページに掲載する
店舗紹介ページでは、建物の形、入口、駐車場、周辺の景色が分かる映像が使いやすくなります。
初めて来店する人へ場所を伝えるなら、道路から店舗へ近づく流れも候補です。ただし、道路上や人の上を自由に飛べるわけではないため、実際に撮れる経路は現場に合わせて決めます。
SNSへ投稿する
SNS用なら、長い空撮よりも短い場面を複数撮っておくほうが編集しやすくなります。
- 建物へ近づく
- 正面から上昇する
- 店舗の周囲を斜めに移動する
- 駐車場から入口へ視線を移す
- 上空から建物全体を見せる
縦長の投稿へ使う場合は、画面の中央付近に店舗が収まる構図も必要です。横長で端に寄せて撮ると、縦長へ切り抜いたときに建物が欠けます。
会社案内や広告へ使う
パンフレットや会社案内では、動画ではなく高解像度の静止画が必要になることがあります。
印刷物へ載せる予定があるなら、動画から切り出すのではなく、静止画としても撮影してもらうかを先に決めます。
開店や改装の記録を残す
記録用なら、完成した建物だけでなく、看板、入口、外壁、駐車場、敷地全体を同じ日に撮っておきます。
数年後に改装するときや、別店舗と比較するときにも使えます。
撮影してほしいカットを先に決める
「店舗をきれいに撮ってください」だけでは、必要な映像が抜けることがあります。
撮影してほしい場面を、優先順に並べます。
建物全体が分かるカット
店舗の正面だけでなく、敷地の形や周囲との位置関係が分かる高さから撮ります。
高く上がりすぎると店舗が小さくなるため、建物全体が収まる最低限の高さを相談します。
店舗へ近づくカット
離れた場所から店舗へゆっくり近づく映像です。
動画の冒頭に使いやすい一方、電線、街路樹、道路、人の通行によっては撮れません。希望する方向を伝えたうえで、現場で代わりの経路を考えてもらいます。
看板と建物を一緒に見せるカット
看板だけを大きく撮るのではなく、建物と一緒に収めることで、店舗の外観を覚えてもらいやすくなります。
看板が道路沿いに離れている場合は、建物と同じ画面に入る角度を事前に探します。
駐車場と入口が分かるカット
車で来店する人が多い店舗では、駐車場の位置と入口までの距離が分かる映像が役立ちます。
撮影当日に駐車場が埋まっていると、区画や入口が見えにくくなります。撮影時間だけ一部を空けられるか決めておきます。
周辺環境が分かるカット
海、山、公園、駅、幹線道路など、立地の特徴がある店舗では周囲も画面に入れます。
周辺に特徴がない場合は、無理に高度を上げる必要はありません。建物が小さくなるだけなら、店舗に近い位置で撮るほうが使いやすくなります。
写真と動画は別に指定する
ドローンで撮影できると聞いても、写真と動画の両方が自動的に納品されるとは限りません。
必要なデータを分けて伝えます。
| 確認する項目 | 伝える内容 |
|---|---|
| 静止画 | 必要な枚数、縦横の向き、印刷予定の有無 |
| 動画 | 希望する長さ、横長か縦長か |
| 画質 | フルHDか4Kか |
| 編集 | 編集済み動画が必要か、撮影素材だけでよいか |
| 音 | BGMや効果音が必要か |
| ロゴ | 店舗名やロゴを入れるか |
| 元データ | 未編集の映像も必要か |
| 納品形式 | MP4、MOV、JPGなど |
4Kで撮影しても、納品動画が必ず4Kになるとは限りません。撮影時の画質と、完成データの画質を分けて聞きます。
後から縦長動画を作る予定があるなら、店舗を画面中央に置いた素材も撮ってもらうと再編集しやすくなります。
申請が必要なら撮影日まで余裕を持たせる
飛行場所や撮り方によって許可・承認申請が必要になる場合、直前の依頼では希望日に間に合わないことがあります。
国土交通省の案内では、飛行許可・承認の申請は飛行開始予定日の10開庁日前までが目安です。不備があると審査に時間がかかるため、初めての申請では余裕を持つよう案内されています。
依頼者が申請を行わない場合でも、業者が場所を調べ、飛行方法を決め、必要な手続きを進める時間が必要です。
撮影日が決まったら、次の順番で進めます。
- 店舗の住所と希望日を伝える
- 飛行できる場所か調べてもらう
- 必要な申請と担当者を決める
- 撮影するカットを決める
- 施設管理者や関係者へ連絡する
- 雨や強風に備えて予備日を決める
- 撮影前日に天候を確認する
開店日や広告公開日が決まっている場合は、撮影日ではなく納品日から逆算します。
雨だけでなく風でも撮影できなくなる
ドローンは雨天だけでなく、風が強い日にも飛ばせないことがあります。
地上では穏やかに感じても、建物の上や建物の間では風が強くなる場合があります。店舗が海沿い、高台、河川の近くにあるなら、予備日を決めておいたほうが予定を組みやすくなります。
日差しの向きも外観の見え方に影響します。
- 正面が暗くなる時間
- ガラスに周囲が映り込む時間
- 看板が建物の影に入る時間
- 駐車場の車が増える時間
- 通行人が多くなる時間
- 配送車が出入りする時間
午前と午後のどちらがよいかは、店舗の向きによって変わります。店舗正面がいつ明るくなるか、普段の様子を依頼者側から伝えると撮影時間を決めやすくなります。
撮影当日までに店舗側で整えること
空から撮ると、地上では気にならない場所まで映ります。
外観だけを掃除しても、屋上、裏側、駐車場、資材置き場が画面に入ることがあります。
撮影前には、次の場所を見ておきます。
- 店舗前のごみや段ボール
- 駐車場の不要な車
- 搬入口の台車や資材
- 屋外に出している清掃用品
- のぼりや旗の向き
- 窓や入口の貼り紙
- 屋上に置かれている物
- 外壁付近の脚立や工具
- 看板の照明
- 植木や花壇の状態
営業中に撮影する場合は、人や車を完全に止められないこともあります。
誰もいない店舗として見せたいなら開店前、にぎわっている様子も入れたいなら営業時間中というように、見せたい状態に合わせて時間を決めます。
来店客やスタッフが映る場合を決めておく
撮影中にスタッフや来店客が映ると、公開前に確認が必要になることがあります。
人を入れたくない場合は、開店前や定休日を選びます。スタッフを並べて撮りたい場合は、立つ位置や服装を決めます。
車のナンバー、近隣住宅の窓、通行人の顔など、公開時に気になる部分も先に伝えます。撮影後にぼかす方法もありますが、編集作業が増えます。
撮る段階で画面に入れないほうが早いものは、当日に移動させます。
見積もり時に送る情報
最初の連絡で情報がそろっていると、撮影できるか、追加の準備が必要かを判断してもらいやすくなります。
次の内容を一つのメッセージにまとめます。
- 店舗の住所
- 撮影希望日と予備日
- 写真と動画のどちらが必要か
- 使用する場所
- 希望する動画の長さ
- 必ず撮ってほしい場所
- 駐車場や敷地の広さ
- 人や車が少ない時間帯
- 店舗周辺の写真
- Googleマップなどで示した希望方向
- 編集の有無
- 希望する納品日
- 施設管理者への連絡状況
「西側から建物へ近づきたい」「店舗と海を同じ画面に入れたい」など、方向が分かる希望は地図に書き込むと伝わりやすくなります。
ただし、希望した経路を必ず飛べるわけではありません。安全上難しい場合に備え、絶対に必要なカットと、撮れれば使いたいカットを分けます。
店舗外観の空撮を依頼するとき
依頼前に、住所、撮影目的、必要な写真と動画、希望日、予備日を整理します。
飛行方法や申請の判断は撮影者に任せるとしても、施設管理者への連絡、駐車場の整理、スタッフへの周知は店舗側で行うことがあります。担当する範囲を見積もりの段階で書面に残しておくと、撮影直前の行き違いを減らせます。
まとめ
店舗外観のドローン撮影は、建物の全体像や駐車場、周辺環境を一つの画面で見せたい場合に向いています。
依頼前に整理したいのは、次の内容です。
- 店舗周辺で飛行できるか
- 施設管理者への連絡が必要か
- 写真と動画のどちらが必要か
- 必ず撮ってほしいカット
- 使用する媒体と画面サイズ
- 人や車が少ない時間帯
- 雨や強風に備えた予備日
- 撮影当日までに片づける場所
高い位置から撮れば、よい店舗紹介になるとは限りません。建物全体、入口、看板、駐車場のうち、来店する人へ何を見せたいのかを先に決めることが大切です。
住所と撮影目的を伝え、飛行できる場所か調べてもらうところから始めます。

