撮影は終わったものの、どこをカットするか、どんなテロップを入れるかまでは決めていない。編集ソフトも使えず、素材を見返して指示書を作る時間も取れない。
このような場合でも、撮影素材を渡してYouTube動画の編集を依頼できます。
ただし、何も伝えずに「いい感じにしてください」と任せると、残してほしい場面が削られたり、想定より長い動画になったりします。細かな編集指示はなくても構いませんが、動画の目的、完成後の長さ、避けたい表現などは先に伝えておく必要があります。
素材だけ渡す動画編集では何を任せられるのか
撮影素材を渡して任せられる作業は、主に次のとおりです。
- 言い間違いや無言部分のカット
- 話の重複部分の削除
- テロップや字幕の追加
- BGMや効果音の挿入
- 写真や図の差し込み
- 音量の調整
- 明るさや色の調整
- モザイクやぼかし
- オープニングとエンディングの追加
- YouTubeへ投稿できる形式での書き出し
撮影者がカット位置を一つずつ指定しなくても、会話の流れや完成尺に合わせて編集してもらえる場合があります。
一方、動画の企画、台本、サムネイル、投稿文、公開作業などは、通常の動画編集とは別に扱われることがあります。
「丸投げ」という言葉だけで判断せず、どの作業まで含めて頼みたいのかを一覧にします。
丸投げでも動画の目的は依頼者が決める
編集者は、映像を見やすく整えることはできます。しかし、誰に何を伝える動画なのかまでは、撮影素材だけでは判断できません。
依頼前に、動画の目的を一文でまとめます。
たとえば、次のような内容です。
- 初心者向けに商品の使い方を説明する
- 店舗の雰囲気を伝えて来店につなげる
- 経営者へのインタビューから会社の考え方を伝える
- セミナーの内容を短くまとめて見込み客に見てもらう
- 対談の面白い部分を残してチャンネル登録につなげる
「YouTube用です」だけでは、編集の速さ、テロップの量、BGMの雰囲気を決められません。
知識を伝える動画なら説明を省きすぎない編集が向いています。雑談や対談なら、話が止まる部分を減らし、テンポを整える方法があります。
完成後の長さを決めておく
素材の長さと完成動画の長さは別です。
60分撮影した素材を50分に整えるのか、要点だけを残して15分にするのかで、カットの判断は大きく変わります。
依頼時には、次のように伝えます。
- 素材:約60分
- 希望する完成尺:15分から20分
- 必ず残したい場面:商品説明と料金案内
- 削ってよい場面:撮影準備、言い直し、雑談
- 判断を任せたい部分:説明が重複している場所
完成尺を決められない場合は、「初めて見る人が無理なく内容を理解できる長さにしたい」など、優先したい条件を書きます。
単に短くするだけでなく、どの内容を残すかがわかる情報を渡します。
素材をすべて送る前に中身を整理する
動画素材を撮影した状態のまま送ることはできますが、不要なファイルまで混ざっていると確認に時間がかかります。
最低限、次のように分けます。
- 本番で使う動画
- 使うか判断を任せる動画
- 商品や店舗の追加映像
- 写真や図
- ロゴ
- オープニングやエンディング
- 使用したい音声
- 使ってはいけない素材
ファイル名も「IMG_4831」のままではなく、内容がわかる名前に変えます。
例としては、次のような付け方があります。
- 01_冒頭あいさつ
- 02_商品説明
- 03_使い方実演
- 04_料金説明
- 05_まとめ
- 店舗外観
- 商品アップ
- 使用不可_言い間違い
撮影順に番号を付けるだけでも、編集者が全体の流れを把握しやすくなります。
カットしてはいけない場面を伝える
編集者へ判断を任せる場合でも、必ず残したい発言は指定します。
特に残したいのは、次のような情報です。
- 商品名
- サービスの特徴
- 料金
- 利用条件
- 開催日や期限
- 店舗名や会社名
- 問い合わせ方法
- 動画の結論
- 視聴者への注意事項
反対に、公開してはいけない内容も伝えます。
- 個人情報
- 社外秘の資料
- 顧客の顔や名前
- パソコン画面に映り込んだ情報
- 未発表の商品
- 他社の音楽や映像
- 撮影場所の住所
- 関係者だけの会話
「不要な部分は削除してください」だけでなく、残す部分と公開できない部分を分けて書きます。
フルテロップと要点テロップの違いを決める
テロップには、話した内容をほぼすべて表示する方法と、要点だけを表示する方法があります。
| 種類 | 特徴 | 向いている動画 |
|---|---|---|
| フルテロップ | 会話の大部分を文字にする | 対談、講座、音声を出せない場所でも見せたい動画 |
| 要点テロップ | 大事な言葉だけを表示する | 商品紹介、解説、インタビュー |
| 強調テロップ | 結論や印象的な言葉だけを目立たせる | エンタメ、短い解説、告知 |
| 字幕形式 | 画面下に一定の形で表示する | セミナー、講演、多言語対応 |
フルテロップを入れると情報量は増えますが、文字が多すぎて映像を見にくくなることもあります。
話し手の言葉を一字一句そのまま入れるのか、読みやすい文章に整えるのかも決めます。
指定がない場合は、参考動画を渡し、「この動画と同じくらいの文字量」と伝える方法があります。
参考動画は編集のどこを見るかを書く
参考にしたいYouTube動画を送ると、完成イメージを伝えやすくなります。
ただし、URLだけを送るのではなく、参考にしたい部分を書きます。
- カットの速さ
- テロップの量
- 文字の色や大きさ
- BGMの雰囲気
- 効果音の多さ
- 写真や図の入れ方
- オープニングの長さ
- 話している人の見せ方
- 全体の落ち着き
- 動画の長さ
「このチャンネルのようにしてください」だけでは、話し方、撮影環境、素材量の違いまで再現できません。
どの部分を近づけたいのかを伝え、使用している映像や音楽をそのまま流用しないようにします。
BGMや効果音は多ければよいわけではない
動画を見やすくするためにBGMや効果音を入れることがありますが、内容によって必要な量は変わります。
商品説明や講座動画では、BGMが大きいと話が聞き取りにくくなります。対談では、場面が変わる場所だけ効果音を使う方法があります。
依頼時には、次のように希望を伝えます。
- 全編に小さくBGMを入れる
- 冒頭と最後だけBGMを入れる
- 効果音は少なめにする
- エンタメ系のにぎやかな音は避ける
- 落ち着いた企業向けの雰囲気にする
- 音声を最優先にして聞き取りやすくする
使用したい音源がある場合は、動画で使える権利を持っているかも調べます。
市販曲やSNSで流行している曲を、許可なくYouTube動画へ入れられるとは限りません。
写真や図を入れてほしい場合
話している内容だけでは伝わりにくい部分に、写真、図、画面画像を入れることがあります。
依頼者側で用意したほうがよい素材は次のとおりです。
- 商品写真
- 店舗写真
- 操作画面
- グラフ
- 料金表
- 地図
- 人物紹介
- ロゴ
- 会社資料
- 過去の動画
編集者に素材探しから任せる場合は、どのような画像が必要なのかを伝えます。
たとえば「集客について話している部分に、それらしい写真を入れる」ではなく、「店舗のInstagram画面と予約フォームの画面を表示する」と指定したほうが、内容に合った映像になります。
実在の商品や店舗を紹介する動画では、一般的な素材写真より、実物の写真を用意したほうが誤解を防げます。
音声に問題がないか先に見る
動画編集では音量を整えたり、一定の雑音を弱めたりできます。ただし、すべての音声をきれいに直せるわけではありません。
次の状態がないか、素材を送る前に確認します。
- 声がほとんど聞こえない
- 音が割れている
- エアコンや工事の音が大きい
- 二人の声が重なっている
- マイクが服に当たっている
- 一部だけ録音されていない
- 映像と音声がずれている
問題がある場所は、ファイル名と時間を書いて伝えます。
例として「商品説明の12分30秒から13分10秒まで、雑音が大きい」と書けば、修正できるかを作業前に判断してもらえます。
聞こえない言葉を編集者が推測して字幕へ入れると、誤った内容になることがあります。専門用語や商品名は、別の文章でも渡します。
見積もりでは素材尺と完成尺を分ける
動画編集の見積もりでは、撮影素材の長さと、完成後の長さが判断材料になります。
同じ10分の完成動画でも、15分の素材から作る場合と、2時間の素材から使う場面を探す場合では、確認する量が違います。
見積もり相談では、次の情報をまとめます。
- 素材動画の合計時間
- ファイル数
- 希望する完成尺
- テロップの量
- 写真や図の挿入数
- BGMや効果音の希望
- モザイクの有無
- 希望納期
- 修正の確認方法
- 継続依頼の予定
素材をまだアップロードできない場合でも、ファイル数と合計時間は先に調べます。
「動画1本の編集」とだけ伝えると、作業量を判断できません。
初稿を見るときは修正を一度にまとめる
最初の編集動画が届いたら、気づいた順に何通も修正を送るのではなく、最後まで見てから一つにまとめます。
修正は、時間と変更内容をセットで書きます。
- 0:18 無言部分をもう少し短くする
- 1:42 商品名のテロップを正式名称へ変更
- 3:10 この説明は重複しているため削除
- 5:25 料金表の画像へ差し替え
- 8:40 個人名が映っているためぼかす
- 11:05 BGMを小さくする
「全体的にテンポを速くしてください」だけでは、どの部分を変えるのか伝わりません。
話す間をすべて削るのか、冒頭だけ短くするのかなど、気になる場面を示します。
追加料金になりやすい変更
初稿を見てから依頼内容を大きく変えると、編集をやり直す範囲が増えます。
作業開始前に決めておきたいのは、次の内容です。
- 完成尺
- 画面の縦横比
- テロップの量
- 動画の雰囲気
- 使用する素材
- オープニングの有無
- サムネイルの有無
- 公開予定日
たとえば横長のYouTube動画を完成させた後に、縦型のショート動画へ変更すると、文字や画像の位置を組み直す必要があります。
要点テロップで進めた後に、全文へテロップを追加する場合も作業量が変わります。
判断できない項目があるなら、購入後ではなく見積もりの段階で相談します。
継続依頼では1本目を見本にする
毎回同じチャンネルの動画を依頼するなら、1本目で編集の形を決めます。
次の内容を統一しておくと、2本目以降のやり取りを減らせます。
- 冒頭の長さ
- カットの速さ
- テロップの色
- フォント
- 名前や肩書の表示
- BGMの種類
- 効果音の量
- 写真や図の見せ方
- エンディング
- 書き出し形式
1本目の完成動画を基準として、「前回と同じ形で、今回だけ商品紹介の部分を長めに残す」と伝えられます。
毎回違う参考動画を渡すと、チャンネル全体の見た目がそろいにくくなります。
動画編集を依頼する前にまとめるもの
指示書を一から作らなくても、次の項目を一つのメモにまとめれば相談できます。
動画の目的
誰に何を伝え、見た後にどうしてほしいのかを書きます。
素材の内容
合計時間、ファイル数、撮影内容をまとめます。
希望する完成尺
正確に決められなければ、目安の時間を伝えます。
残したい場面
商品説明、料金、結論など、削除してはいけない部分を指定します。
公開できない部分
個人情報、未公開情報、使えない音楽や映像を伝えます。
編集の雰囲気
参考動画と、参考にしたい箇所を書きます。
テロップ
全文、要点のみ、強調部分のみのどれにするか決めます。
納期
初稿を確認する日と、YouTubeへ公開する日を分けます。
納品後の使い方
YouTubeだけで使うのか、Webサイトや広告にも使うのかを伝えます。
まとめ
撮影素材しか用意できない場合でも、YouTube動画の編集は依頼できます。
細かなカット位置やテロップの文章まで決める必要はありません。ただし、動画の目的、完成後の長さ、残したい場面、公開できない情報は依頼者が伝えます。
素材は内容ごとに分け、わかりやすいファイル名を付けます。参考動画を送る場合は、カット、テロップ、BGMなど、どこを参考にしてほしいのかを書きます。
丸投げとは、何も伝えずに任せることではありません。編集者が判断できる材料を渡し、細かな作業を任せることです。最初の一本で編集の形を決めておけば、継続して依頼するときのやり取りも減らせます。

