動画に映った人物の顔や車のナンバーを隠したいものの、対象が動くたびにモザイクがずれてしまう。固定位置へモザイクを置くだけでは、歩く人物や走行中の車には対応できません。
このような動画では、対象の動きに合わせてモザイクを移動させる追従処理が必要です。自動追跡を使える編集ソフトもありますが、手ぶれ、暗さ、対象同士の重なりなどによって追跡が外れることがあります。
編集を依頼するときは、動画を渡すだけでなく、隠したい対象と時間帯を具体的に伝えることが大切です。
動画のモザイク追従とは
モザイク追従とは、動画内で移動する人物や物に合わせて、モザイクの位置や大きさを変える編集です。
主に次のような場面で使われます。
- 歩いている人の顔を隠す
- 店内動画に映った来店客を隠す
- 走行中の車のナンバーを隠す
- スマートフォンやパソコンの画面を隠す
- 書類に書かれた名前や住所を隠す
- 商品や看板の一部を公開しないようにする
対象が画面内で動かない場合は、同じ位置へモザイクを置くだけで済みます。
一方、人物が歩く、カメラが動く、車が画面を横切るといった動画では、モザイクも対象に合わせて動かさなければなりません。
固定モザイクと追従モザイクの違い
| 加工方法 | 向いている動画 | 作業の特徴 |
|---|---|---|
| 固定モザイク | カメラも対象も動かない動画 | 同じ場所を隠し続ける |
| 自動追従 | 顔や物の形が見分けやすい動画 | ソフトが対象の動きを追う |
| 手動追従 | 動きが速い、対象が重なる動画 | 場面ごとに位置を直す |
| 画面全体のぼかし | 背景や周囲をまとめて隠す動画 | 細かな追従が不要 |
自動追従を使えば、すべての場面を一コマずつ動かす必要はありません。ただし、一度設定すれば最後まで正確に追い続けるとは限りません。
対象が後ろを向いた場面や、別の人物と重なった場面では、追跡先が入れ替わることがあります。その部分だけ手作業で直すのが一般的です。
モザイクが追従しにくい動画
追従の難しさは、動画の長さだけでは決まりません。
短い動画でも、次の条件が重なると調整箇所が増えます。
手ぶれが大きい
手持ち撮影で画面全体が細かく揺れていると、顔やナンバーの位置も大きく動きます。
特に歩きながら撮影した動画や、車内から撮影した動画では、対象の動きとカメラの揺れが重なります。
対象が画面の外へ出入りする
人物が一度画面の外へ消え、別の場所から戻ってくると、同じ対象として追跡されないことがあります。
この場合は、再び画面に入ったところから追跡を設定し直します。
複数人が交差する
人混みやイベント会場では、人物同士が重なる場面が多くなります。
隠したい人の前を別の人が横切ると、モザイクが別の顔へ移ったり、その場に残ったりすることがあります。
映像が暗い
夜間や照明の少ない室内では、顔や物の輪郭を見分けにくくなります。
暗さだけでなく、逆光、強い影、点滅する照明も追跡へ影響します。
対象が小さい
遠くにいる人物の顔や、小さく映ったナンバーは位置を指定しにくくなります。
動画を拡大して確認できても、元の映像に十分な情報が残っていなければ、対象を正確に隠せないことがあります。
場面転換の効果が入っている
フェードやぼかしを使った場面転換では、前後の映像が一時的に重なります。
同じ人物でも、薄く映った顔と通常の顔を別々に処理しなければならない場合があります。
依頼前に渡す動画は編集前のデータがよい
モザイク加工を依頼するときは、できるだけ撮影後の元動画か、カットだけを済ませた動画を渡します。
先に次の加工を入れると、追従しにくくなることがあります。
- フェードインやフェードアウト
- 場面転換のぼかし
- 動画全体への色加工
- 強い手ぶれ補正
- 画面の拡大や縮小
- 再生速度の変更
- 画質を下げる圧縮
最終的に使わない場面が決まっているなら、カット後の動画を渡しても構いません。ただし、カット部分の前後へ特殊な効果を入れる前にモザイクをかけたほうが作業しやすくなります。
テロップやBGMを入れた完成間近の動画しか残っていない場合は、そのデータで対応できるか相談します。
隠したい対象は具体的に指定する
「映っている人へモザイクをお願いします」だけでは、誰を隠すのか判断できないことがあります。
たとえば店内動画には、店員、来店客、通行人、鏡に映った人物が同時に入ることがあります。
依頼時には、対象を次のように書きます。
- 赤い服を着ている人物
- 画面右側を歩いている子ども
- 運転席に座っている人物
- 白い車の前側ナンバー
- 奥の鏡に映っている人物
- 机の上にある書類の氏名欄
服装や位置だけでは途中で見分けにくくなる場合があります。動画内の時間も一緒に伝えると、対象を探しやすくなります。
時間を付けた指示書を作る
モザイクを入れる場面が少ない場合は、動画の時間と対象を一覧にします。
| 開始時間 | 終了時間 | 隠す対象 |
|---|---|---|
| 0分08秒 | 0分21秒 | 画面左から歩いてくる人物の顔 |
| 0分34秒 | 0分41秒 | 白い車のナンバー |
| 1分02秒 | 1分18秒 | 店内奥にいる来店客2人 |
| 1分45秒 | 1分52秒 | 書類に書かれた氏名と住所 |
秒数は完全に正確でなくても構いません。
どの場面を指しているかわかる程度に書き、必要なら該当画面のスクリーンショットへ印を付けます。
動画全体を通して同じ人物を隠す場合は、「赤い上着の人物を、登場している全場面で隠す」とまとめて伝えます。
鏡やガラスに映った対象を見落とさない
人物の顔を隠しても、鏡、窓、車体、金属部分へ同じ顔が映っていることがあります。
映り込みは元の対象とは別の場所を動くため、通常は別のモザイクが必要です。
依頼前には次の場所も見ておきます。
- 店内の鏡
- 窓ガラス
- 車のサイドミラー
- 光沢のある商品
- スマートフォンの画面
- テレビやモニター
- 水面や金属板
また、カットの直前や直後に対象が一瞬だけ映る場合もあります。通常速度では気づかなくても、一時停止すると顔や文字が見えることがあります。
公開前には動画を最初から最後まで見直します。
モザイクの形と強さを決める
隠し方には、主にモザイクとぼかしがあります。
| 隠し方 | 見た目 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| モザイク | 四角い粒で隠す | 顔、ナンバー、文字 |
| ぼかし | 輪郭をなめらかにぼかす | 背景、軽く隠したい部分 |
| 黒塗り | 対象を完全に覆う | 公開できない文字や情報 |
| 画像や図形 | スタンプのように隠す | SNS向けの短い動画 |
薄いぼかしでは、停止したときに顔や文字を読み取れることがあります。
何を隠したいのかによって、必要な強さは変わります。雰囲気を整えるためのぼかしなのか、人物や個人情報を判別できないようにする加工なのかを伝えます。
モザイクの形にも、丸、四角、対象の形に沿ったものがあります。見た目に希望がある場合は、参考画像を添えます。
モザイクの範囲は少し広めに取る
顔の輪郭ぎりぎりにモザイクを合わせると、人物が急に動いた瞬間に目や口が外へ出ることがあります。
そのため、追従モザイクは対象より少し広めに設定します。
車のナンバーも同様です。プレート部分ぎりぎりではなく、振動や方向の変化を考えて余裕を持たせます。
ただし、範囲を広くしすぎると周囲の商品や人物まで見えにくくなります。
どこまで隠れてよいのか、次のように伝えると調整しやすくなります。
- 顔全体を余裕を持って隠す
- 目元だけではなく輪郭まで隠す
- ナンバープレート全体を隠す
- 周囲の商品にはできるだけかけない
- 人物の顔と名札を別々に隠す
見積もり前に整理したい項目
モザイク追従の作業量は、動画の長さ、対象の数、動きの激しさによって変わります。
依頼前に次の内容をまとめます。
- 動画全体の長さ
- 隠したい対象の数
- 対象が映る時間
- 人物、顔、ナンバー、文字など対象の種類
- カメラが固定されているか
- 手ぶれがあるか
- 映像が暗くないか
- 鏡やガラスへの映り込みがあるか
- モザイクとぼかしのどちらを使うか
- 希望する納品形式
- 使用する予定日
- 元動画を送れるか
同じ人物が動画の途中で何度も登場する場合は、一人として数えるのか、登場する場面ごとに作業箇所として扱うのかも確認します。
口頭だけで説明するより、実際の動画を見てもらったほうが作業範囲を判断しやすくなります。
納品後は通常速度と一時停止の両方で見る
完成した動画は、通常速度で再生するだけでは不十分です。
動きの速い場面を一時停止し、モザイクが外れていないか見ます。
特に見落としやすいのは次の場面です。
- 対象が画面へ入る瞬間
- 対象が画面から消える直前
- 人物同士が重なる瞬間
- カメラが急に動く場面
- 場面が切り替わる前後
- 鏡や窓へ対象が映る場面
- 動画の速度が変わる場面
修正箇所が見つかったら、時間と内容をセットで伝えます。
「途中で外れています」ではなく、「1分23秒で、赤い服の人物の右目がモザイクから外れる」と書くと、該当部分をすぐに確認できます。
動画のモザイク加工を依頼する場合
依頼前に、元動画、隠したい対象、対象が映る時間をそろえます。
とくに、人物が複数いる動画では、「誰を隠すのか」と「誰はそのままでよいのか」を分けてください。鏡やガラスへの映り込み、車の前後にあるナンバーなども、別の対象として書いておきます。
参考画像を作る場合は、動画の画面を撮影し、隠したい場所へ丸印や矢印を付けます。動画内の時間も画像名に入れておくと伝わりやすくなります。
希望納期だけでなく、SNSへの投稿、社内提出、イベント上映など、実際に動画を使う日も伝えます。納品後に確認と修正を行う時間を残して依頼するのが安全です。
まとめ
動く人物や車のナンバーへモザイクを入れるには、対象の移動に合わせた追従処理が必要です。
手ぶれ、暗さ、人同士の重なり、画面外への出入りがある動画では、自動追従だけで仕上がらず、場面ごとの調整が必要になることがあります。
依頼するときは、隠したい対象、表示される時間、モザイクの強さを具体的に伝えます。鏡やガラスへの映り込みも忘れずに確認してください。
完成後は動画を一時停止しながら見直し、モザイクが外れる瞬間がないか確認します。依頼前の指定と納品後の確認を丁寧に行うことで、公開後に顔や個人情報が見えてしまう失敗を防げます。

